津田塾大学(東京都小平市)は2017年4月、課題解決能力を備えた人材養成を目指す「総合政策学部」を千駄ヶ谷キャンパスに新設することを発表した。女子大学に「総合政策学部」が設置されるのは初めてで、同大が複数学部体制になるのは、1948年に新制大学となり「学芸学部」を設置して以来初となる。16日には同キャンパス津田ホールにおいて新学部開設記者発表が行われ、同大の島田精一理事長、高橋裕子学長、総合政策学部創設準備室長の萱野稔人教授が出席した。
総合政策学部は、社会科学の知識とコミュニケーション力、データ分析力を土台に、現代社会における新たなルールを追求する学部。グローバル化や少子高齢化が進む現代社会において、課題解決に向けてリーダーシップを発揮できる女性を育成することを目的に、交通アクセスに恵まれた千駄ヶ谷キャンパスに設置される。
初めにあいさつに立った島田氏は、新学部設置が1969年に国際関係学科を創設以来40年ぶりの大きな改革だと述べ、「116年前に同大を設立した津田梅子の『自立する女性を育てる』という考えが、今まさに現実のものとなっている」と話した。また、さまざまな課題を抱える日本が生き残っていくためには、女性の活躍推進が非常に大きな要素だとし、「新学部の設置は、時代や日本社会の要請に応えることでもあります。大学としても新体制のためにさらに努力をしていきたい」と語った。
続いてあいさつに立った高橋氏は、新学部が最も重視するのは「課題解決能力」だとし、津田梅子が同大の前身である「女子英学塾」を開校したのは、明治という、女性にとって閉塞的な社会に対するオリジナリティーに富む解決方法だったと話した。梅子が自ら課題を発見し、国境を越えて日米の女性とのコラボレーションを展開しながら同塾を創設したことをロールモデルとして、新学部では、国や地域、文系・理系といった枠組みを超えた多くの人たちと実践的な学びを共有しながら、これからの複雑な社会に対処していく力を培っていくと述べた。
高橋氏は、梅子が留学先の米国に向かう船上で、未知の世界に対して怖がるのではなく、身を乗り出して前方の景色に見入る姿を描いた1枚の絵を紹介し、「この果敢な姿と眼差しが、同大を象徴する『ビジョナリー』です。学びを通して自分を変え、社会を変えたいという勇気と情熱と志。より良い社会を作る一翼を担っていくだのという気概を持つ女性たちを、新学部では待っています」と述べ、「女性の力で社会を変える、変えられるのだというメッセージを学生たちに積極的に与え、推進力になっていけるよう指導していき、21世紀型のパイオニアを輩出していきます」と意気込みを語った。
来年度から新学部の学部長に就任する萱野氏は、「新学部の一番の狙いは、課題解決能力を身に付けること」だと強調し、新学部のカリキュラムもそれに合わせて組まれていることを説明した。基礎と応用に分かれたカリキュラムでは、1、2年次では3つの基礎科目「英語」「ソーシャル・サイエンス」「データ・サイエンス」を身に付けていく。3年次からは、「パブリック・ポリシー」「エコノミック・マネジメント」「ソーシャル・アーキテクチャ」「ヒューマン・ディベロップメント」の4つの課題領域が設定され、そのうちの1つに進み、専門性の高いコースのもとで実践的な課題解決能力を養成していく。
萱野氏は、「課題解決型学習を多く取り入れるカリキュラムでは、学問を教えるに際して明確な目標を設定することによって、しっかりした課題解決能力が身に付くことになる」と述べた。教員も、実際に課題解決に取り組んできた研究者・専門家だけでなく、新しい分野をきめ細かく教えることができる人材が必要だとし、特にデータ・サイエンスの授業では、ティーチング・アシスタントの活用を検討しているという。
同大は小平キャンパスと千駄ヶ谷キャンパスを有するが、新学部は千駄ヶ谷キャンパスの新校舎(12月竣工予定)に設置される。萱野氏は「この立地を生かし、外部との交流、学問的連携を図っていきたい」と話した。また、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックのメーン会場に隣接していることから、運営への協力はもとより、企業や官庁、NGO・NPOとも連携し、社会性に富んだ大学として発展することを目指していると語った。
総合政策学部の2017年度入試に関する詳細は同大ホームページで公開されている。