新しい教会堂の建設が厳しく規制されているエジプトで、同国最大のキリスト教派であるコプト正教会は24日、政府当局から示された教会建築法案の修正案を受け入れる考えを示した。同法案をめぐっては、政府当局と国内の主要キリスト教派が数週間にわたって話し合いを行い、コプト正教会はこれまで、「受け入れがたい修正事項があることには驚きだ」などと、政府案に否定的な声明を発表していた。デイリー・ニュース・エジプト(DNE)などが伝えた。
DNEによると、コプト正教会の教皇タワドロス2世は同日、同教会の主教ら100人以上と会議を開き、同法案について話し合った。同法案についてはこれまで、教会側の担当者の話では、8条から9条で構成されると伝えられてきたが、コプト正教会が同日発表した声明によると10条からなるという。
法案の詳細については明らかにされていないが、コプト正教会は18日に発表した声明では、「実用的ではない」とし、「エジプトのコプト教徒の市民権や愛国心を無視された状態」で法案が草稿されていると述べるなど、強い調子で批判していた。
DNEによると、コプト正教会は今回、同法案受け入れに転じたが、教会側が批判していた内容が同法案から削られたかどうかは不明だという。コプト正教会は24日の声明で、「法の執行者が、法律条項を逐語的に適用するのではなく、偏狭さのない態度で応じることを願う」と述べており、DNEは「この新法がキリスト教徒を満足させるものになるかどうか疑問を起こさせる」と伝えている。
エジプトのキリスト教会は、新しい教会堂を建てるに当たり、国による厳しい規制のために、長年にわたって困難な状況に直面してきた。エジプトは現在、モスクに対しては慣習法上の権利を認めているが、教会堂に対しては認めていない。このため、同法案では、教会堂の新築や改築の申請処理を4カ月以内に行うことを定めた規定を含め、現在の規制を緩和するものとなることが長く期待されてきた。
一方、別の報道によると、同法案では、キリスト教の礼拝が持たれる建物は、全て「公認教会」として指定される可能性が高いという。
DNEによると、同法案はこれまでにエジプト国内のキリスト主要3教派が承認しており、今後はエジプト議会下院の代議院に送られ、審議される。
エジプトではここ数カ月間、イスラム教徒の暴徒によるキリスト教徒への襲撃が多発している。秘密裏に教会堂が建てられているという、うわさが出回っているためだ。
14日には、エジプト人キリスト教徒の一団が首都カイロの中心街でめったにない抗議行動を行った。イスラム教が支配的な同国内で、キリスト教徒は二流市民として扱わていると主張し、キリスト教徒の権利を擁護するよう政府に求めたが、その後は行き詰まった状態になっている。
エジプトでは抗議活動が厳しく禁じられているにもかかわらず、この抗議行動には40人近くが参加し、イスラム教徒とキリスト教徒間の論争における権利を要求する横断幕を掲げて抗議した。
教会建築法案に関する今月の話し合いと抗議は、キリスト教徒への一連の襲撃、特にコプト教徒が比較的多く居住しているエジプト中部のミニヤ県での襲撃事件が起きた後に行われた。
警察は先月、エジプト北部の村に住むコプト教徒らの家屋が放火された事件の後、容疑者15人を逮捕した。その数日前には、コプト正教会ミニヤ教区のアンバ・マカリオス大主教が、平均10日に1件、少数派への襲撃が起きていると述べ、宗教的差別による暴力から市民を守るため、警察は法律順守を強化してほしいと訴えていた。
2011年に起きた「アラブの春」以降、エジプトではキリスト教徒とイスラム教徒間の緊張が増している。最悪の事件は、15年2月の過激派組織「イスラム国」(IS)によるエジプト人キリスト教徒の出稼ぎ労働者21人の斬首だ。
エジプトには、900万人のキリスト教徒がいると推定されている。そのほとんどがコプト教徒で、イスラム教スンニ派が大勢を占めるエジプトで、総人口の約10パーセントを占めている。