赤ちゃんの不思議を研究する同志社大学(京都市)赤ちゃん学研究センターは、今年4月に文部科学省より「共同利用・共同研究拠点」として認定された。それを受け、同センターは「赤ちゃん学研究拠点」として事業をスタートさせることをこのほど発表した。今後、共同利用・共同研究の公募や、定期セミナーを開催する予定だ。
子どもの心と体の発達とその関係について総合的に研究する「赤ちゃん学」は、2001年に「日本赤ちゃん学会」が設立された新しい研究分野。同センターでは、ヒトの行動の始まりとしての胎児研究に注目し、新生児・乳児・幼児と一貫した研究を行っている。
これまで小児医学や心理学のみならず、情報工学やロボット工学などと融合した研究により、胎児の持つ素晴らしい能力を明らかにし、「出生後も自ら動き、成長、発達する赤ちゃん」像を作り出してきた。
今回「共同利用・共同研究拠点」に認定されたことで、同志社大学の学研都市キャンパス快風館内に拠点を置き、実験用模擬診察室、視線計測室、脳波測定室、行動解析室、成人用計測室などの施設・設備で、赤ちゃんの発達過程におけるさまざまなデータを収集。それらをデータベース化し、共同利用・共同研究プロジェクトを通じて、関連研究者に提供し、「赤ちゃん学」のさらなる発展を目指す。
16年度は、同センターが研究の重点対象とする、発生学分野、統計・解析学分野、心理学分野、教育・政策学分野、看護学分野の中から課題を設定し、公募による共同利用・共同研究を実施する。さらには、赤ちゃん研究における生命倫理、個人情報保護に関わる「胎児や乳幼児の人権」を課題とした共同研究により、新たな知見による提言も行っていくという。
共同利用・共同研究の募集は7月から開始予定で、発生学、統計・解析学、心理学の3分野で行う。研究助成費は、年100万円を2年間。また、定期セミナーは、第1回目が13日に、第2回目が7月21日に開催されることが決まっている。同センターでは、「この共同利用・共同研究による科学的な成果を、子どもたちの育つ現場に還元していきたい」と話している。
共同利用・共同研究の公募・定期セミナーの詳細、また、同センターが進めている研究については、同センターのホームページ。
「共同利用・共同研究拠点」は、個々の大学が持っている大型の研究設備や大量の資料・データなどを全国の関連研究者に提供し、「共同利用・共同研究」を実施・推進することで、学術研究の発展に大きく貢献しようとする事業。現在文部科学省では、49大学(29国立大学、20公私立大学)99拠点を認定している。