朝日新聞によると、ネットワークビジネスと呼ばれるマルチ取引大手の「ナチュラリープラス」(東京都港区)に対し、消費者庁は事実に基づかない説明をして勧誘するなどの行為があったとして、特定商取引法違反(不実告知など)で一部業務停止を命じる方針を固めた。
同紙によると、国民生活センターへのナチュラリープラスに関する相談件数が14年度に増加したため、消費者庁が昨年4月、ナチュラリープラスの事務所2カ所に立ち入り調査を実施。ナチュラリープライスはこれを受け、新規会員の登録と勧誘を同年5月〜6月中旬、自粛する対応を取っていた。相談件数は減少傾向にあるが、「問題ある勧誘が改善されているとは言い難い」とし、一部業務停止を命じることを決めたという。
日本流通経済新聞の昨年5月の報道によると、昨年4月の立ち入り調査では、具体的な違反事例などを明示した書面は提示されなかったが、調査後の消費者庁とのやり取りの中で、「氏名等の明示義務違反」「概要書面の不交付」「不実告知」「迷惑行為」などを示唆されていたという。
ナチュラリープラスは、同社ホームページ上に公開している概要書面で、ナチュラリープラスのビジネスが、特定商取引法の「連鎖販売取引」(マルチ取引)に該当すると説明し、「紹介者の方は、相手の方が入会する、しないにかかわらず、必ずこの概要書面を事前に渡し、内容を説明してください」などと注意。特定商取引法の定める事項を遵守するよう求めている。
しかし、朝日新聞によるとナチュラリープラスの毎月の新規会員は1万人前後おり、同紙は「個々の会員にコンプライアンス教育を行うことは極めて困難だったようだ」と伝えている。
国民生活センターによると、マルチ取引とは「商品・サービスを契約して、次は自分が買い手を探し、買い手が増えるごとにマージンが入るネズミ講式の取引形態」。取り扱い商品・サービスは、健康器具や化粧品、学習教材、出資などさまざまで、国民生活センターに寄せられる相談内容は、解約・返金に関するものが多いという。マルチ取引に関する相談件数は2010年度〜14年度の5年間はいずれも1万件を超えており、14年度は過去5年で最も多い1万1907件だった。
国民生活センターに寄せられる最近の相談事例では、「『不眠が治る』と勧められ、医療機器だというアメジスト入りの温熱マットをマルチ販売で売る会社から契約をしたが、実は医療機器ではなかった。解約したい」「久しぶりに会った知人から、布団販売のマルチビジネスへの入会を勧められ契約した。50万円以上と高額なのでやめたいが、知人との関係が壊れないか不安だ」といたものがあるという。