インドネシア政府は、クリスマスシーズンに起こり得る過激派組織「イスラム国」(IS)の襲撃に備え、教会を警備するために警察官約1500人を配置する予定だと発表した。
クリスマスと新年の祝日に教会を警備する任務で、警察官はインドネシアの北スマトラ県に派遣される。「警備の任務は、すでに全ての教会で始まっています」と、メダン警察のハマム・ワヒュディ局長は述べた。「機動隊とも連携しています」
16日、「国際キリスト教コンサーン」(ICC)の南アジア支部長ウィリアム・スターク氏は取材に対し、インドネシア国内の関係者からの情報によると、クリスマスシーズンに教会を保護する努力が現実に実行されると述べた。スターク氏は、警備を強固にした理由の一つには、ISがキリスト教の礼拝堂などを標的とする恐れがあるという。また、他の問題もはらんでいる。
「さまざまな理由のうち最も顕著なことは、インドネシア政府は、国内でISの活動、襲撃がいかなる形でも起こることを望まないということです。政府は、ISが市民の一部の興味を引き、急進化させていることを認識しています。バングラデシュのように、政府は国内でのいかなるISの活動をも予防もしくは否定することになるでしょう。ですから、教会を保護することは、キリスト教徒を守るというよりも、むしろISの活動を防止する意味を持つでしょう」
世界福音同盟(WEA)をはじめとする、キリスト教の迫害に反対するほかの団体も、取材に対し、インドネシア政府が教会を守るために警官数千人を派遣することを認めた。
「事実として、政府はクリスマスイブをはじめ、12月の夜にはさらに多くの警官を配置する予定です。11月31日、私はこのことをインドネシア福音同盟に確認しました」と、WEA信教の自由委員会のゴッドフリー・ヨガラジャ氏は述べた。
イラクとシリア領内を越えて影響力を拡大しているとみられるISは、世界で最も大きなイスラム教徒の人口を持つインドネシアからの支持が上昇していることを、好意的に受け止めていると報じられている。
ゲイトストーン・インスティテュートなどのシンクタンクは、インドネシア国内でキリスト教徒に対する暴力的な聖戦とイスラム過激主義が増大しており、10月には国内で関連する事件が何件か発生したと報告している。イスラム教の指導者たちは教会を破壊しており、キリスト教徒は「アッラーの敵」だと警告している。一方地方当局は、襲撃犯を告訴できていないと、ゲイトストーン・インスティテュートは述べた。
昨年、何カ所かの教会が破壊された。当局は、問題となった教会が当初あった場所に登録されていないと述べたが、牧師たちはこの事件がキリスト教徒に対する宗教的迫害だと語った。ゲイトストーン・インスティテュートは、礼拝所を建てるためにその地域の異なる信仰を持つ60世帯以上の署名を得ることを義務付ける、2006年の礼拝堂令の施行以降、登記の許可を得るのはほとんど不可能だとも指摘した。
キリスト教徒に対する迫害の厳しさによって国々を毎年ランク付けしている「オープン・ドアーズ」は、キリスト教徒がイスラム過激派と当局による教会閉鎖の両方の迫害を受けているとして、2015年度のランキングでインドネシアを47位に位置付けた。
しかしスターク氏は、警官の派遣がキリスト教徒たちにまつわる懸念の増大、あるいは関係の改善を示しているわけではないとの見方を示した。
「インドネシアのクリスチャンにとって、教会の閉鎖は大きな問題として存在していますし、社会における差別、クリスチャンや礼拝の場を攻撃した犯人を罰しないことなども同様です。インドネシアでは、いまだ千カ所の教会が閉鎖されたままです。そのうちの80パーセントは、法的に認められるための要件を満たしているにもかかわらず、閉鎖されたままなのです」とスターク氏は語り、いまだ閉鎖されているHKBP(バタック・プロテスタント)フィラデルフィア教会、インドネシアキリスト教会の二つの大きな教会が大統領官邸前でクリスマス礼拝を持つことを明かした。
「このようなことを考えると、警官を派遣して教会を保護することは、キリスト教徒を守るというよりも、むしろISの活動を防止する意味を持つでしょう」
以前からキリスト教会は、爆弾を投げ込まれるなどの被害に遭っており、2000年のクリスマスイブには国内で襲撃事件が起こり、18人が死亡した。
宗教省によると、北スマトラ県でキリスト教徒は少数派とはいえ、人口の約30パーセントを占める。北スマトラ県には2008年、プロテスタント教会が約5400、カトリック教会が約1700あり、それぞれ約260万人と約45万人の信者がいた。