イマーム(イスラム教の指導者)の代表らによると、フランスの警察当局は、過激派に近い教義を唱える説教者をかくまった疑いがあるとして、約160カ所のモスクを閉鎖する可能性があるという。
この閉鎖措置は、パリの連続テロ事件からの非常事態宣言に次いで行われる。すでに3カ所が閉鎖され、9人が逮捕、22人が出国を禁止された。
イマームと刑務所職員との調整に当たっているイマームの長、ハッサン・エル・アラウイ氏は2日、アルジャジーラに対し、「当局などの認可なしに運営していることのほか、憎悪をあおる説教や『タクフィーリー』の説教をしていることを理由に、100~160カ所のモスクが閉鎖されるだろう」と語った。
「タクフィーリー(takfiri)」とは、同じ信仰を持つ他者を背教者(宗教的信念や原理を捨てた者)として糾弾し、殺人を含む暴力的な懲罰の対象にするイスラム教徒を意味する。
「このような説教は、フランスのような安全な国ではもちろんのこと、イスラム共同体の中ですら許されるべきではない」とエル・アラウイ氏。
パレスチナ人イスラム教徒で、イスラム教改革を目指す「アル・カワキビ財団」の共同設立者、フェリックス・マルクヮルト氏はアルジャジーラに、「さらに多くのモスクが閉鎖されるだろう」と語った。マルクヮルト氏は、フランス国内のさまざまな都市にあるモスクを訪問してきたが、そこで聞いた説教の内容に「驚かされた」という。
「非常に気がかりな世界観があった。イスラム教徒に対し、『反イスラム教運動がフランス当局によって組織され、イスラム教徒でないフランス人は、少数派であるイスラム教徒に敵対している』などといった考えを喧伝するような説教を聞いた」
先月発生したパリの同時多発テロ事件では、過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出している。130人が死亡し、うち89人はバタクラン劇場でマシンガンの乱射により殺害された。