食品会社の製造工程で発生する規格外品などを引き取り、福祉施設などに無料で提供する「フードバンク」と呼ばれる活動が注目を集めている。まだ食べられるにもかかわらず、廃棄されてしまう食品を削減するため、農林水産省や各団体が、この取り組みを有効に活用するための活動を進めている。農林水産省によれば、米国ではフードバンクの歴史は既に40年にもなるが、日本では2000年に入って広がり始め、その活動内容はまだあまり一般には知られていない。「アガペーミニストリー」というホームレス支援活動で、フードバンクを活用している茨城県の水戸キリストの教会のスタッフ、木村ひとみさんに話を伺った。
同教会でのホームレス支援活動は、1994年、前任のマーク・ハンコック宣教師が水戸駅周辺のホームレスの人々に、衣服やおにぎりなどの食べ物を提供したことに始まる。教会員の有志、教会全体へと徐々にその活動の輪が広がり、2006年からはアガペーミニストリーの名で、地域の他教会とも協力して毎月第2土曜日に活動している。フードバンクの活用を始めたのは、2013年12月から。現在は月に1度、NPO法人フードバンク茨城から食品を受け取っている。提供してもらっている食品には、玄米、レトルトのおかゆ、缶詰、ようかん、お茶、のり、コーンフレークなどがある。2014年6月からは、パンの提供も受けるようになり、1度に提供される食品の総量は120キロほどになるという。受け取った食品は、アガペーミニストリーでホームレスの人たちに「お土産」として手渡される。
以前は、ホームレス1人当たり約2キロしか配れなかったが、フードバンクから提供を受けるようになったことで、今では約6キロにまで増えた。教会にも時々、空腹で困りきった人がやって来ることもあるというが、レトルト食品や缶詰などは長く保存が利くため、そうした人々にも食品を渡すことができ、非常に助かっているという。
フードバンク茨城は、「もったいないをありがとうに」を合言葉に活動している。フードバンクとの出会いについて、木村さんは「神様の導き」と話す。「フードバンクの支援と、毎回20~30人ほどの教会内外の素晴らしい仲間たちの協力の下で、水戸市内でお腹を空かせた方々への食事の支援を末永く続けていければと願っています。自立への手助け、また神様の御心にかなった奉仕の在り方を祈り求め続けながら、必要のある人々の支援を長く続けていきたいです」
今年7月と8月には、同教会でフードバンク茨城主催の「フードバンクセミナー」も開かれた。食のセーフティーネットを支えるための人材育成の機会として、フードバンクから提供された食品が、どのように生活困窮者の支援に活用されているか、木村さんが話をした。
フードバンク茨城によれば、日本の貧困率は約15・7%で、約2000万人の日本人が貧困状態にあり、そのうち日常生活に必要な食事を得ることができない人は、約75万人にも上る。一方で日本では、毎年約1900万トンもの食品廃棄物が排出されており、そのうち、本来食べることができるが、包装や形の問題のため捨てられる「食品ロス」は約500~900万トンあると推計されている。この量は、国連世界食糧計画(WFP)が途上国に支援している年間370万トンよりも多い。
こうした問題を解決するための策として注目を集めるフードバンク。限られた財政の中で、さまざまな福祉活動に取り組む日本のキリスト教会にとっても、この活動は大きな手助けとなるはずだ。