24日午後2時から星陵会館(東京都千代田区)で、「戦争法案に反対する宗教者・門徒・信者全国集会—国会前抗議祈念行動—」 が開催されるのを前に、同集会の呼び掛け人を含むキリスト者や仏教者が集会の趣旨や内容について説明しようと、参議院議員会館で20日、記者会見を行った。
会見を行ったのは、呼び掛け人では、「念仏者九条の会」代表で浄土真宗本願寺派住職の小武正教(しょうきょう)氏、同派の仏教学者で「戦争法案に反対する宗教者の会」代表の山崎龍明氏、日本キリスト教協議会(NCC)議長で牧師の小橋孝一氏。他に、賛同団体から「日本カトリック正義と平和協議会」事務局長で神父の大倉一美(かずよし)氏、浄土真宗大谷派僧侶で「真宗大谷派・九条の会」の一人である石川勇吉氏、「平和を実現するキリスト者ネット」(キリスト者平和ネット)事務局副代表で牧師の村瀬俊夫氏も共に会見した。
言葉と行動の一致問われている
小武氏は、「集団的自衛権を行使すれば、日本は米国の後について戦争に参加していくことになる。具体的には戦死者がそこに生まれてくる。そのことを前にして、ここではっきりとそれを止めるという意思表示をし、そしてそれに対して私たちが立ち上がることがなかったならば、今まで言ってきたことがはっきり言ってうそになる。やはり言ってきたことはやらねばならない。非常に単純なことであり、言葉と行動を一致させる、まさにそれが問われるのは今だと思っている」と語った。そして、「それぞれの教団の戦争責任・戦後責任を今果たしていくべきだ」と付け加えた。
7月24日に築地本願寺(東京都中央区)で開かれた「戦争法案に反対する集会 宗教者・僧侶・門徒による首相官邸前抗議行動」には250人が参加し、「殺さない 殺させない」「この『戦争法案』は平和憲法を投げ捨てるだけでなく、私たちの真理とする『教え』に全く背くものである」「今こそこの暴挙に対して、私たち宗教者・僧侶・門徒は、自らが信仰に生きる『証し』として、双手をあげて立ちはだかる決意である」などとするアピールを採択した。また、小武氏によると、同日夜に参議院議員会館前で行われた抗議行動には、300人が参加した。
小武氏はこのアピール文に言及し、「このアピール文の中に『殺されない』というのは入っていない。たとえ殺されても人を殺さない、殺させない、そういう思いがこの中に込められているから、これを私たちは真理の言葉として掲げていく」と説明した。
けじめつけるために声を
続いて山崎氏は、「一国のリーダーがこれだけ堂々とうそをつくという国は他にはないのではないか」と述べるとともに、「命ある限りとにかく連帯してこの法案だけは通してはいけない。それが宗教者のはしくれとして生きる存在証明ではないか」「国民も野党も全く安倍政権になめられている。これをきちっとけじめをつけるために、声を上げ続けなければならない」などと語った。
宗教は争いではなく、平和をつくる
小橋氏は、「宗教の違いを超えてというのではなく、それぞれの宗教の中心的な真理から真っ直ぐに発想すると、一致して行動するということになるのだいうことを、今回特に感じさせられている」と述べた。
また、「宗教が争いの原因の一つになるという考えがメディアで出てくるが、私はそうじゃないと思う。宗教をいろんな形で利用しようとする者たちがそういうふうにしてしまうのであって、本当に真面目に道を求めている各宗教がそこから発想すれば、本当に平和をつくり上げる働きになるんだと思っている」と語った。
小橋氏は今月7日、NCC議長として敗戦70年に当たっての談話を発表しており、「これ(談話)はまさにキリスト教の聖書の信仰そのものから出たらこうなるというだけの話だが、結論は皆さんと同じ」などと語った。
命懸けて戦争法案反対を
大倉氏は、「政治と宗教が結び付いて、先のいわゆる第二次世界大戦、あるいはアジア太平洋戦争に大きな役割を果たした。国家神道である靖国神社、その裏にある天皇制によって、多くの人たちは戦争に駆り出され、ノーと誰も言えなかった。ほとんどの日本の宗教団体もそれに対して従わざるを得なかったどころか、戦争に協力してしまった」と述べるとともに、「日本国憲法20条に定められた信教の自由も危なくなってきている」とし、靖国神社に参拝する政治家たちの動きに言及した。
そして、「天皇を元首にし、自衛隊を国防軍にするという自民党改憲草案に反対しなければ、また過去の戦争と同じことに、私たちは宗教者としても参加せざるを得なくなる可能性がある」と危惧を表明した。
「イエス様の言葉に『黙っていても石が叫ぶ』(ルカ19:40)(というのがある)。だから石でも叫ぶ時が来るわけだし、石でない私たちは、命を懸けて、人を殺し殺されるこの戦争法案に絶対反対しなければいけないと思う」と大倉氏は述べ、「今回、東京の星陵会館で全国集会が行われることになったのは本当に画期的だと思う。この動きが日本中に広がれば、宗教者、門徒・信者が参加する機会がもっとできると思う。この24日をスタートとして、全力で努力したいと思って今日も参加した」と結んだ。
世論大きくなれば廃案、退陣は不可能でない
石川氏は、真宗大谷派岡崎教区会が7月24日に行った安保法案の撤回と廃案を求める決議を紹介し、「過去の歴史に学び、豊かな歴史を開くことに逆行する安全保障関連法案の撤回・廃案を、真宗大谷派岡崎教区教区会は悲しみをもって強く求めます」と結ぶその一文を読み上げた。その上で石川氏は、「こうした決議を心強く思っていると同時に、一刻も早くこうした決議の内容を門徒・市民の皆さんにお知らせして、共に法案反対の声を上げていくことができればと願っている」と述べた。
石川氏によると、28日に名古屋鉄道の東岡崎駅前(愛知県岡崎市)で僧侶が宣伝戦を計画しているという。「今そうした形で全国津々浦々でいろいろな階層の人たちが反対の意志を示し始めている。会期はあとひと月と少しだが、今大きな国民世論をさらに大きくしていくことができれば、私はこの期間に廃案、安倍政権の退陣を実現させることは決して不可能ではないと確信している」と語った。
宗教者が一致して先頭に
そして最後に村瀬氏は、「今回の緊急事態には、私も非常に危機感を覚えている。この戦争法案を廃案に追い込みたい。安倍内閣にも退陣を求めたい。そのために世論を盛り上げるためにも、宗教者はできるかぎり先頭に立っていかなければいけないという強い思いを抱かされている」と語った。
村瀬氏は自らの戦争体験に触れ、「私はもう86歳だから、戦争中、16歳までは軍国少年としての時代を過ごした。本当に軍国主義をたたき込まれたように思う。だからそういう時代がどんなに惨めな悪い時代であるかということを、私なりに身に染みて感じているので、そうした時代が再び来るなんてことはとんでもないことだという思いを強く抱いている」と話した。
1966年に建国記念日の制定の問題が起こったとき、それに対する反対意見を公聴会で述べたことが、こうした問題に関わる最初のきっかけだったと村瀬氏は述べた。またその後、靖国神社法案が提出されたとき、神社神道を除く宗教界が一致して反対し、廃案に追い込むまで大きな力になったことを思い起こすと述べ、「今回もこの悪法、戦争法案を葬るために、安倍内閣を退陣に追い込むために、国民の世論が盛り上がるためにも、宗教者が一致して反対に立ち上がることはものすごく大事だと思っている」と語った。
一方、小武、山崎、小橋、大倉の4氏は、本紙記者の質問に対し、自らと同じ教団や教会の門徒・信者が、安倍政権や自民党の中にいることを認め、山崎氏は「自民党を支えている多くの人は真宗の門徒だ」と述べた。また、公明党の支持母体である創価学会への働き掛けについて、山崎氏は「その可能性を探ってみることは必要だ」と答えた。