キリスト教や仏教などの平和運動団体「宗教者九条の和」は16日午後、参議院議員会館で、「武力で平和はつくれない 戦争法制反対! いのちと憲法9条を守ろう!『宗教者祈念集会』」を開催した。80人以上(主催者発表)の参加者は、現在国会で審議中の安保関連法案が憲法違反の「戦争法案」だとし、撤回を求める抗議声明を採択した(記事下に全文あり)。
集会の初めにあいさつした日本キリスト教協議会(NCC)議長の小橋孝一牧師(日本基督教団)は、「戦後70年ということでこんな事態が来るとは思ってもみなかった。70年前に私はまだ子どもだったが、70年たってみると、安全を守ると言いながら戦争を始めるという、非常にとんでもないことが進められていく時代になっていると思う。何が何でもこれは阻止しなければならない」と語った。
小橋牧師はまた、「明治維新の時には、まさか日本が侵略国家になるとはほとんど誰も思っていなかったと思う。ところが、70年後に日本は何をやっていたかというと、日中戦争を始めて大陸侵略を本格的に始めたわけだ」と述べ、「既にそれ以前に朝鮮や満州を支配していたわけだが」と付け加えた。
「70年というのは本当に大変なものだと思う。ここで本当に踏ん張らないと、さらに大きな、先の大戦の間違いよりももっとひどいことになるだろう」と小橋牧師は語り、「戦争のことなんか全く知らなかったような連中が、こういうことを計画して進めようとしている。私は本当に許せないと思う。そういう意味で今日もこの会を進めていきたいと思う」とあいさつを結んだ。
その後、高田健氏(許すな!憲法改悪・市民連絡会)が情勢報告を行い、「運動の力で戦争法案を廃案に」と訴えた。高田氏は、①「戦後」でありつづけたい、「戦後」のバトンを次世代に渡す責任、②「戦争する国」の実現を目指す安倍晋三の歴史観、③政治生命を賭けて強行採決に出てくる安倍政権とのたたかい、という3つの点について論じ、「共同を強め、広範な連携で世論を興す」と語った。
日本カトリック正義と平和協議会事務局長の大倉一美神父は、「宗教者の覚悟が問われると思う。逃げ出さないで最後まで(法案を)廃案に頑張っていきたいと思う」と語った。
その後、5月から鈴木怜子氏に代わって「平和を実現するキリスト者ネット」(キリスト者平和ネット)の事務局代表を新しく務めている、沖縄出身の平良愛香牧師(日本基督教団)があいさつした。
平良牧師は、「『沖縄は大変ですね』とよく言われると、『はい、とっても大変です』という思いと同時に、『どれだけ知っていて言っているの?』という疑問がまず思い浮かぶ。それから、『誰のせいだと思っているの?』という怒りも出てくる。『沖縄が大変なのは、日本が踏みつけにしてるからでしょ。そこの自覚があるの?』と問いたくなる。そして3つ目が、『本当に大変なのは日本じゃないの? 今、日本の状況のことをどれだけ認識してるの?』と聞きたくなる」と語った。
「沖縄に生まれた者としては、70年間戦争をしなかったなんて、とても言えない。(沖縄は)絶えず、第二次世界大戦の後、戦争に巻き込まれてその発進地となり、被害もいっぱいあるが、どんどん加害者になっていった。沖縄の人たちが特に辺野古新基地(建設)に反対しているのは、これ以上戦争を生み出したくないからだ。負担が増えるなんてそんな生易しいことを言っているのではない。私たちの島をこれ以上人殺しの島にしないでくれということを訴えて、『オール沖縄』ということになっている」と平良牧師は述べた上で、現在公開中の『戦場(いくさば)ぬ止(とぅどぅ)み』(三上智恵監督)という映画に言及した。
「実際に日本から人が殺しに行って死んでいく法律ができようとしている。これは何としても止めないといけない。私たちは人殺しになってはいけない」と平良牧師は訴えた。
また、「なぜキリスト者がそんな平和活動をするのか、なぜ宗教者が政治的な活動をするのかと聞かれることがあるが、それは命を大切にするからだ。それを徹底的に貫くのが宗教者であり、それは必ず実現すると信じているのが宗教者。だから、宗教者でない方から宗教者は意外にも期待されている。その期待にも応えていきたいと思う。一緒に頑張っていこう」と呼び掛けた。
最後に日本山妙法寺僧侶の木津博充氏が閉会のあいさつをし、「私たちが運動を強めれば強めるほど、権力は私たちに歯向かってくる。(私が)何も暴力的なことも過激なこともしていなくても、逮捕したいときは逮捕する。それでもめげずにやる。命を懸けてもやる。そこで殺されても私は本当に悲しくはない。そういう覚悟はできている。覚悟がなかったら一歩だって表を歩けない」と強い決意を語った。
その上で木津氏は、「『殺すな。殺させるな。子々孫々の命を再び戦場に送ることのないように。そして権力者はまた昔やったように人の息子たちを戦場に送って、軍需産業と一部の権力者たちがぼろ儲けをするための戦争をするな』。それをどこまでも私たちは訴えていかなければならない。原発もそうだ。人の命を奪うもの全てをなくして、子どもたちに手渡すように、さらに命の限り努力を続けよう」と力強く訴えた。
この集会では3人の国会議員があいさつしたほか、英国からBBCのフリーランス記者の姿もあった。記者によると、この集会の模様は、7月末にニュース番組「BBCワールド」で放送される予定だという。
主催者によると、平和をつくり出す宗教者ネットが毎月行っている政府に対する署名は、第138回となる今回、1000筆に達し、これまでの総計で10万6840筆になったという。
集会後には、参議院議員会館前で祈念行動が行われ、「戦争法案反対」などと訴えるとともに、各宗派による平和の祈りがささげられた。この日は、安保法制案に反対する労働組合などの人たち約300人が、衆議院第2議員会館と参議院議員会館前で同時に座り込みを続けていた。
14日には、東京・渋谷で約3500人の若者たちが「戦争立法に反対する渋谷デモ」を行ったほか、一大共同行動である「総がかり行動」が、2万5000人規模で安保関連法案に反対して国会を包囲するデモを行うなど、抗議の声が高まっている。衆議院第2議員会館前では、「総がかり行動」が呼び掛ける国会前連続座り込み行動が、15日から24日までの平日に行われているという。宗教者九条の和は、「体力に応じてご参加ください」と呼び掛けている。
また、キリスト者平和ネットも、ホームページで6月から7月にかけて東京で行われる集会の予定を知らせている。宗教者九条の和による次回の宗教者祈念集会は、7月2日(木)午後2時から参議院議員会館で行われる予定。また、9月26日には沖縄から僧侶を招いて講演会を予定しているという。場所は未定。詳しくは宗教者九条の和のホームページで。
■「宗教者九条の和」の抗議声明
憲法違反の「戦争法案」は撤回してください!
武力で平和はつくれない
「宗教者九条の和」抗議声明6月4日の衆議院憲法審査会で、3人の憲法学者が、自民党推薦の参考人を含む全員、集団的自衛権行使容認の安全保障関連法案を「違憲」と批判したことに対し、安倍政権は9日、1959年の「砂川事件」の最高裁判例を持ち出し、「必要な自衛の措置を憲法は禁じていない」の一節を無理矢理こじつけ、他国での戦闘参加を「合憲」と主張、強行突破を目論んでいます。
しかし、砂川事件の判決は集団的自衛権にふれるものではない、とは憲法学者の等しく解説していることであり、内閣法制局でさえも、「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」(1972年の政府見解)と発表しています。それを「整合性はとれている」と臆面もなく主張している政府・与党は狂っているとしか言いようがありません。
NHKをはじめ、いずれの世論調査でも、本法案には反対が圧倒的多数を占めています。政府・与党の国会審議に対する不誠実な態度を国民は理解しています。国民はもはや、政府・与党を信頼せず、政府の権威は失墜するでしょう。軽率にも国会に問う前にアメリカで約束してきてしまった、そのツケが回ってきているのであります。安倍首相の面子のために、日本国を危機におとしいれることはできません。
私たち「宗教者九条の和」は、「いのちを守る」の一点共同で、教団・教派を越えて団結し、宗教者として、「殺すな、殺させるな」の良心に従って、この戦争法案は日本国憲法を破壊するものであり、戦後70年の平和の歩みを放棄するものであると、徹底して抗議活動を続けてきました。
「戦争法案」を撤回しないのならば、安倍首相の退陣を求めざるを得ません。宗教者の責任と使命から、この戦後最悪の暴挙に全力をあげて阻止することを決意し、重ねて撤回を要求いたします。
いのちを第一と信じ、今を生きる宗教者として、平和への祈りと行動をあきらめずに続け、その光を絶やすことなく伝えていくことを心から願い、「殺し殺される」戦争法案の廃案を求め、大勢の国民各層の方々と共に力を尽くしてまいります。2015年6月16日