青森県の十和田市立新渡戸記念館は、市議会により6月で廃館が決められたが、7月以降も市民によるボランティアによって、博物館としての活動を継続している。記念館を支えるボランティア団体「Kyosokyodo(共創郷土)」と、文化財保護協会有志や市民有志らは、廃館・取り壊しの撤回と、建物や資料の保存活用を求める活動を全国に展開しており、6日からはインターネットで署名の募集を始めた。
十和田市議会は6月26日、新渡戸記念館の廃館と取り壊しを賛成多数で可決した。議会前日には、記念館関係者や市民らが、廃館・取り壊しの撤回などを求めて、市に2700人分余りの署名を提出していた。しかし、市の指定文化財も含む所蔵資料の保存活用について、資料の所有者である新渡戸家と市の間で協議が進んでいないままの状態で廃館が決まった。その後、新渡戸家は、廃館の理由とされる耐震診断に疑問があるなどとして、廃館取り消しを求める訴えを青森地裁に起こしている。
7月以降、記念館の公共インフラにかかる費用は募金によって賄われている。市民のボランティアらは、文化財の専門家の指導の下、資料の保護を行い、新渡戸家と市の裁判の結果が出、双方の協議が整うまで博物館としての活動を継続していくという。また、耐震診断の再調査を行い、建物の保存も求めていくとしている。廃館・取り壊し撤回を求めるインターネット署名は12日現在で、目標の5000人に対して約3700人の賛同が集まっている。
新渡戸記念館は、日本を代表する国際人であり、旧5千円札で有名な新渡戸稲造の遺品や蔵書などを展示する博物館。稲造が蔵書を寄贈して、私設の新渡戸文庫が設置されてから今年で90周年、新渡戸文庫の敷地内に記念館が建てられてから今年で50周年を迎える。稲造に関わる資料とともに、十和田市のルーツとなった父祖の三本木原開拓の資料や、新渡戸家伝来の甲冑(かっちゅう)なども展示されている。
新渡戸記念館の廃館・取り壊し撤回を求めるインターネット署名はこちらから。