青森県の十和田市立新渡戸記念館が、建物の耐震強度不足などから廃館を求められている問題で、同市議会は26日午前、同館の廃止と解体を盛り込んだ条例案を賛成多数で可決した。
新渡戸稲造の蔵書の寄贈を受けた新渡戸文庫のあった同市の敷地に、1965年に設立された新渡戸記念館は、盛岡藩士だった新渡戸の祖父、傳(つとう)が開拓した郷土の歴史や、新渡戸の遺品、蔵書、直筆の書、業績をめぐる展示など、資料約8000点が展示されていたが、今年4月、市から建物の耐震強度不足を指摘され、休館状態となっていた。
今月に入り、市は6月末で廃館とし、館員全員を解雇、今年度中に建物を解体する方針を示していた。一方、同館は9日に同館の学芸員が、耐震調査に問題があり、資料の保存についても懸念があるとして、住民監査請求書を市に提出、20日に同館を訪問した元建築学会会長で東京大学名誉教授の内田祥哉氏らは、同館の歴史的な建築物としての価値に触れた上で、耐震補強を行った上での使用継続の可能性を述べていた。
地元紙の報道によると、22日の市議会定例会一般質問では、市は、市の耐震判断は国の基準や指針に基づき行ったもので問題がないとして、建物が倒壊し死傷者が出た場合への懸念などを示し、早期の廃館方針を示したという。
25日には、地元の市民グループが、廃館の撤回と資料の保存を求めた2799人分の署名を同市の小山田久市長に提出。この際、小山田市長は、建物をすぐに取り壊すことは考えていないとして、資料を市内の「称徳館」に一時的に保管し、新しい建物を整備すると説明したという。
本紙の電話取材に対して同館は、「廃止の決定は残念。現在も地元の市民や、全国の建築、文化財保護の専門家から署名が集まり続けており、その数は3400人を超えた。地元などと協議しながら、何とかして存続を訴えていきたい」と話している。