キリスト教宣教の働きを理由に2011年からイランの刑務所に投獄されているベーナム・イラニ牧師(43)が一時的に保釈され、4年以上ぶりに自宅の妻子の元に戻った。
元イスラム教徒で、現在はキリスト教のプロテスタント福音派の指導者であるイラニ牧師は、もともとイラン北部アルボルズ州の州都キャラジで教会を設立したとして懲役6年の刑に処せられたと報じられていた。
しかし昨年9月、イラニ牧師は、死刑が適用されることもあり得る「地上に堕落をもたらした罪」を含む新たに18の容疑で告発された。最終的には、イランで家の教会を設立したキリスト教指導者に対してよく適用される「イランの国家安全に対する罪」で有罪と宣告されたことにより、イラニ牧師はさらに6年の懲役が科せられ、合計12年収監されることとなった。
中東地域の迫害を受けている教会を支援する宣教団体で、イラニ牧師の釈放のために継続して活動してきた「プレゼント・トゥルース・ミニストリーズ」は10日、家族が4万ドル(約500万円)の保釈金を支払ったことで、4日に15日間の保釈が認められたと伝えた。保釈金を支払うために、イラニ牧師の母親は自宅を担保に入れたという。
釈放期間中、イラニ牧師は、アルメニア人キリスト教徒の妻クリスティーナさんと2人の子どもがいる自宅に戻った。
「短い時間といえども、イラニ牧師が自宅に戻り、家族と共にいられることをとても感謝しています」と、プレゼント・トゥルース・ミニストリーズは声明を発表した。「4年半ぶりに、家族が共に集まりました」
昨年6月、イラニ牧師は3週間以上にわたって消息不明になり、多くの人がイラニ牧師が秘密裏に処刑されたのではないかと案じていた。しかし、彼は後に刑務所に戻った。それでもどこへ連れて行かれたか、また何をされたかについて語ることは許されていないという。
当時、プレゼント・トゥルース・ミニストリーズは、「イラニ牧師は2014年7月7日以降消息不明となっており、所在について家族に何の情報も伝わっていません」「彼は連行され、知らされることなく処刑された恐れがあります」と伝えていた。
イラニ牧師の保釈の知らせは、13日(日本時間14日)にイランと世界6カ国の間で行われた核協議での合意と共になされた。保守派の間からは、この合意によって、最終的にはイランが核兵器を手にするだろうとして批判の声が上がっている。批判者は、このような合意は米国人のサイード・アベディニ牧師、ワシントンポスト紙のジャーナリスト、ジェイソン・レサイアン氏ら、イランで不当に収監されている米国民の釈放を条件とするべきだったと断固として主張している。
オバマ政権は米国人釈放の確約をイラン政府から得ていないとみられてはいるが、報道によると、2010年に宣教の働きを理由に投獄されていたイラン人のファルシード・ファティ牧師の釈放が繰り上げられた。2017年に釈放予定だったファティ牧師は、今年12月10日に釈放される。