英国のキリスト教団体が、冒とく罪で死刑判決を言い渡され、現在パキスタンで刑務所に収容されている女性キリスト教徒アーシア・ビビさんの解放を求めるため、同国の大統領と首相に対し連絡を取り、直接訴えるよう呼び掛けている。
ビビさんは2009年、イスラム教徒と同じ飲み水を飲んだとして、怒った女性イスラム教徒の団体により冒とく罪で告発され、容疑を強く否認したが、10年に死刑判決を受けた。現在、最高裁による審問を待っているが、既に5年近く刑務所に収容されている。ビビさんの家族によると、ビビさんの健康状態は悪化しており、歩行も困難で、独房の中で吐血することもあるという。
50歳になるビビさんは5児の母親で、米ニュースサイト「グローバル・ディスパッチ」によると、ビビさんの家族は先月、1カ月以上ぶりに面会を許されたが、ビビさんが「ほとんど歩けないほど弱っている」ことに気が付いた。家族の関係者によると、ビビさんは以前から腸から出血があり、状態はただ悪くなるばかりで、緊急に治療が必要だという。
この関係者は、ビビさんの弁護士が、治療のため、現在収容されているパキスタン中部のムルターンにある刑務所から、家族に近くまたより良いケアを提供する東部のラホールにある刑務所に移送するために必要な法手続きを取っているとも話した。
グローバル・ディスパッチは、匿名の家族関係者の話として、「嘔吐(おうと)に伴って血の痕が見られます。アーシアは食事を適切に取るのが困難で、胸の痛みが続いています。そのため、アーシアはできる限り早く、血液検査を含む健診を受けられるようにする必要があります」と伝えた。
パキスタンの著名な人権弁護士でキリスト教徒のサーダー・ムシュタック・ジル氏は取材に対し、ビビさんが吐血していることについて同僚から聞いていると語った。「私は同僚から、アーシア・ビビさんの健康状態が悪化していること、吐血していることを聞きました」
ここ5年間、ビビさんは、薄汚れた独房の中という過酷な状況下で生きなければならなくなった上、失敗に終わったが彼女を毒殺する試みもあり、今は自分の食事を自身で作らなければならなくなったと、英国パキスタン・キリスト教協会(BPCA)代表のウィルソン・チョードリー氏は述べた。
「アーシア・ビビさんの健康状態はここのところ急速に悪化しているため、キリスト教徒の方には、ビビさんのことを日常の祈りの課題として覚えてもらうよう呼び掛けています」と、チョードリー氏は声明で述べた。「アーシアさんは、神がこの拘束から解放してくださることを信じていますが、最高裁の審問の日まで生きるのは難しいようです。多くの人々は、ビビさんの早い死去によって、正義を腐敗させようというパキスタン当局の試みによって(審問の)日程が遅れていると考えています」
チョードリー氏は、欧米諸国でこの問題に関心を持つキリスト教徒に対し、ビビさんを助けるために自国の政府職員に働き掛け、ビビさんの最高裁での審問を早めるか、あるいはいっそのこと、ビビさんを解放するようにパキスタン政府に圧力をかけるよう呼び掛けている。
「もしアーシア・ビビさんが名誉回復の機会を奪われるなら、正義を非常にバカにしたものであり、パキスタンの民主主義国という評判を失墜させることになるでしょう」とチョードリー氏。「私は欧米諸国の人々に、各国の指導者たちに対し、アーシアさんの代わりに訴え、また直接パキスタンの大統領に電子メールを送り、最高裁での審問の日程を早め、現在の悪い健康状態に対し適切な治療を受けさせるために圧力をかけるよう強く勧めます」。ビビさんの解放のために、パキスタンのマムヌーン・フセイン大統領([email protected])と、ナワズ・シャリフ首相([email protected])に電子メールを送るよう呼び掛けている。BPCAは他にも、ビビさんの解放のための署名活動も行っている。
4月、ビビさんの家族は教皇フランシスコにバチカンで面会し、共に祈った。そして、ビビさんの解放のために、パキスタン政府に圧力をかけるよう依願した。