カリフォルニア・ハンティントンビーチは、サーフィンの世界大会などが行われる有名なビーチだ。なぜか、教会がなかなか根付かないと言われているのだが、そこで新しく教会を開拓した日本人の若手牧師、石飛恒(Tobi)さんを紹介したい。
東京生まれ。7歳からハンティントンビーチという完璧にバイリンガル・バイカルチャーで育ったその鋭い視点から、こちらで暮らす若者や日本からの永住者の心を揺さぶるメッセージをぶつける。懐の深さと温かみを感じさせる彼のメッセージは、信仰のあるなしに関わらず多くの人を引き付けている。ここ何年か、南カリフォルニアで行われる集会の奉仕で引っ張りだこなのもよく分かる。
6歳の時、通っていたキリスト教幼稚園でイエス様を信じた。その後、若年性特発性関節炎という病気にかかり、長期入院を余儀なくされたが、祈ればイエス様が必ず癒やしてくださるという純粋な信仰をもって病気と向き合った。1カ月後、病気は完全に癒やされ、何事もなかったかのように退院したという。そんな息子の信仰を見て、母親がクリスチャンになったという。
「小学2年生の時からアメリカで暮らし始め、最初は戸惑いもありましたが、日本とアメリカ、両方の文化の良い所をたくさん吸収し、イキイキと活発に過ごしていました。週末は日本語補習校と日本人教会に通っていたので、日本語能力を維持すると同時に、日本人と接する機会を失わずにすみました。誰とでも仲良くなり、とにかく明るくて幸せな子でした!」と語るように、本当に「JOY」そのもののTobiさんだが、思春期に変化が起こった。
「思春期はかなり荒れていましたね(笑)。アメリカ人の中では最もジャパニーズで、ちょっと変わった奴。また、日本人の輪の中では一番アメリカンな存在でした。だから誰といても、どこかで縮めきれないギャップを感じていました。そして、『本当の自分は一体何人なんだろう?』という疑問にいつも悩まされ、内面はいつもビクビクしていました。大学時代にイエス・キリストと再び出会い、本当のアイデンティティーは『神様の愛する息子』だと信じられたんです。そうしたら、自分が『何人』なのかなんてどうでもよくなり、すっかり素直になれました。それまでは、どちらの文化でも中途半端な自分が嫌で仕方なかったのに、イエス様と出会ってからは、自分に与えられたバイカルチャーというアイデンティティーを心から感謝するようになりました」
2004年、就職を機に日本に戻り、社会人として生活を送っている中で、神様から「牧師」というコーリングを頂いた。07年にはアメリカに戻り、その4年後に神学校を卒業した。
RIZEチャーチを始めるきっかけとなった聖句は、エステル記4章13、14節だそうだ。
「2011年からロサンゼルスにある日系教会の牧会に携わり、家から車で1時間以上かけて通っていました。そんなある日、このエステル記の箇所がズドーンと心に響きました。モルデカイがエステルに言った、『あなたがこの王国に来たのは、もしかすると、この時のためであるかもしれない』という言葉がまさに自分の状況にあてはまったんです。そしてエステルは、全てを捨てる覚悟でユダヤ人の救いのために立ち上がりました。自分ももしかすると、ハンティントンビーチに20年以上住んできたのは、また日米の文化の狭間で育ってきたのは、この町でまだ神様の愛を知らない人たちに、また、バイカルチャーを経験している人たちに、イエス・キリストの愛を伝える、その時のためであるかもしれない、そう語られました。その後、素晴らしい仲間が与えられ、2014年の9月、ハンティントンビーチの大学の一室でRIZEチャーチが誕生しました。私たちもエステルと同じように勇気をもって、イエス・キリストの復活の力を信じて、どんな時も神様の栄光のために立ち上がっていきたいと思っています」と語ってくれた。
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マリ・パクストン(Mari Paxton)
日本でスタジオミュージシャン、コマーシャルシンガーとして活躍後、オーストラリア、アメリカへ渡る。結婚後、ラマーズクラスで知り合った牧師夫妻を通して教会に導かれ、クリスチャンに。家庭集会を日本人主婦向けに始める。現在、南カリフォルニアのサドルバック教会(リック・ウォレン牧師)でゴスペルクワイアのソリストとして活躍し、3人の子どもの成長とともに、夫婦向けの家庭集会をホストしている。今年9月には、アンディ・デロス・サントスのプロデュースでアルバム「主を信じよう」(iTunesにて配信中)を発表した。