ビジネスマンになる前に出会った数々の試練・苦難 その3
3つ目の試練・苦難は、大学入試に落ちたが、予備校入学2日目に補欠で合格の連絡を受け入学し、卒業後は別の大学の大学院入試に合格したということである。
列車事故で頭を手術して以来、私はしばしば頭痛に悩まされるようになった。そのため、高校の2年、3年という大学入試に向けての大切な勉学期間を満足に過ごすことができなかった。父は私の身体を心配し、一年浪人することを覚悟し、無理をしないようにといつも言ってくれていた。そんな状態だったので、案の定大学入試は1期校の大学(医学部)、2期校の大学(工学部)とも不合格となってしまった。
仕方なく予備校に入学し、友人と下宿して浪人生活を始めた。しかし、たった1日目でむなしさがこみ上げ、こんな生活を1年間続けるのかと思うと、やりきれなさに胸が締め付けられるようであった。そんな私を神は哀れんでくださったのだと思う。予備校入学後のわずか2日目に、不合格となった2期校の大学から補欠で合格という連絡が入った。どうすべきか父に相談すると、父は1年間浪人するのはもったいない、その費用を大学院での学びに当てる方が、より建設的であると言ってくれた。
浪人生活がいやだったこと、また父のこのアドバイスもあって、私はその2期校の大学に入学した。ただ、入学して1年後に、浪人していた高校の同級生たちが、次々とトップクラスの有名大学に入学したと聞き、少々心が騒いだ。しかし私は入学した大学で、別の大学の大学院へ進学することを目指して勉学に励んだ。その結果、この大学を首席で卒業することができ、またトップクラスの別の大学の大学院の入試にも合格することができた。当時はまだ大学院で学ぶ人が、今ほどは多くなかった時代である。神は見えざる御手を持って、私を大学入試に落ちたところから、大学院卒業というところにまで、1年も無駄にすることなく引き上げてくださった。そのことを覚え、心から神に感謝している。
4つ目の試練・苦難は、大学院卒業時に、ある企業の就職試験を受けるも落ちるが、たまたま研究室に研修に来られていた(株)小松製作所、現コマツの方の紹介によって、コマツに入社することができたということである。
入学した大学院での学びは、楽しかった。所属したのは、日本における自動車工学の第一人者と言われる先生がおられた研究室であった。そのため研究室には、色々な自動車メーカーから貸与された乗用車が多くあり、自動車メーカーとの交流や他大学との交流などもとても活発であった。また、企業から研修に来ておられた方も多数いた。私はその研究室でエンジンの研究を行い、色々な知識を吸収することができ、また視野も広げることができ、充実した修士課程の2年間を過ごした。
学びが終わり就職することになり、どのようないきさつだったかは覚えていないが、広島にある自動車メーカーの入社試験を受けた。この自動車メーカーは、当時世界的に注目されていたロータリーエンジンという新しいエンジンの研究開発を行っていた。私の入社試験の最終面接者は、そのロータリーエンジンの研究開発部長で、当時自動車業界やエンジン業界では、知らない人はいないというほど有名な人であった。私は彼の迫力と名前とに圧倒されて、面接では余りうまく受け答えすることができなかった。自分でも不甲斐なく思ったためであろうか、その時のことだけは妙に記憶に残っている。
入社試験は案の定不合格となり、推薦してくれた研究室の先生には、大変申し訳ない思いをした。また私自身もかなり気落ちした。しかし、またもや神はそんな私を哀れんでくださった。たまたまコマツからエンジンの研修のために研究室に来ておられた方が、私を自分の会社に紹介して下さり、私は運よく直ぐにコマツに入社することができた。そして私にとってこの会社に入社できたことは、むしろ幸いであった。入社して最初に配属されたのは研究所であったが、私はこの研究所に60歳の定年まで36年間継続して勤めることができ、最終的には研究職の最高位の首席技監という職位にまで導かれたからである。神は見えざる御手を持って、私を入社試験に落ちたところから、別のよりふさわしい企業に入社させるよう引き上げてくださった。今そのことを覚え、本当に神に感謝している。
以上、私がビジネスマンになる前の24年間に出会った4つの試練・苦難において、神の見えざる御手によって、すなわち神の一般恩恵によって、私がどのように守られたのかを紹介した。この恩恵がなければ、今私はこの世にいないと思うし、このようなことを記すこともできなかったことと思う。
ただ、私はビジネスマンとなった後に、信仰によって救われてキリスト者となり、神の一般恩恵だけではなく、神の特別恩恵をも受ける者となった。では、神の特別恩恵をも頂くことによって、私のビジネスマンとなった後に出会った試練・苦難は、どのように神の御手によって守られたであろうか。次に、そのことを紹介したい。
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(参考並びに引用資料)
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門谷晥一(かどたに・かんいち)
1943年生まれ。東京大学工学部大学院修士課程卒業。米国ミネソタ州立大学工学部大学院にてPh.D.(工学博士)取得。小松製作所研究本部首席技監(役員待遇理事)などを歴任。2006年、関西聖書学院本科卒業。神奈川県厚木市にて妻と共に自宅にて教会の開拓開始。アガペコミュニティーチャーチ牧師。著書に『ビジネスマンから牧師への祝福された道―今、見えてきた大切なこと―』(イーグレープ)。