「川内原発の安全を考える市民の会」代表で同原発から近い日本基督教団串木野教会(鹿児島県いちき串木野市)の藤田房二牧師は24日、本紙の電話インタビューに応え、22日に鹿児島地裁が九州電力の同原発の再稼働差し止め仮処分の申し立てを却下したことについて、「意外でした」と話し、「本当に承服できない」と強く語った。
この裁判を傍聴したという藤田牧師は、14日に運転差し止めの仮処分が出された高浜原発(福井県)と同じように、川内原発についても再稼働を認めない仮処分が出ると期待していたという。これまでも、裁判官が決定文を正しく書けるかどうか心配で、正しい決定が出されるよう皆で祈ってきたという。
しかし、この決定を前に、昨年5月に大飯原発(福井県)の差し止め判決を出し、今回の高浜原発の仮処分を決定した福井地裁の樋口英明裁判長が、4月1日付で名古屋家裁へ異動することになった。高浜原発の仮処分決定については、同地裁での職務代行辞令が出されたため、決定を言い渡すことができたが、藤田牧師は「左遷されたのでしょう。だからやはり日本の国策に反するような(決定)文が書けるだけの勇気があるだろうかという心配をしていたわけです」と話した。
今回の決定の論点は、津波対策と火砕流、避難計画の3点だったと藤田牧師は説明し、「特に鹿児島は火山が多いから」と付け加えた。
藤田牧師によると、川内原発から30キロ以内では、避難計画を出すよう県から催促があったという。「『出さないのは串木野教会の友愛幼稚園だけですから、もう出してください』と言うので出しましたけれど、実効性のないもので、仕方なく出したわけです」と、同幼稚園の園長でもある藤田牧師は語った。
これまでに県による避難計画の説明会があり、九州電力や県、国の職員も出席したというが、藤田牧師は「その説明で十分だという、分かりましたという人はほとんどいなかった」と言う。「それを知ってか知らないか分かりませんけれども、『避難計画は十分だ』というのはあり得ないわけです」と今回の決定について批判し、「そういう意味では、本当に承服しがたいというか、承知できない」と語気を強めた。また、「ですから、高浜と比較してみますと、高浜の樋口裁判官は素晴らしい人だったと、そう思っているところです」と話した。
藤田牧師によると、新聞では、町の活性化につながるとして決定を歓迎する声が伝えられていたという。しかし、「本当にいのちのことを考えないで、目先の経済優先の人たちは喜んでいるかもしれませんけれど、この決定が出たからといって絶対安全が保障されたわけではありません」と強調した。
その上で、「これでやめるわけではなく、今後も再稼働の危険性を訴えて努力し続けていかなければと思っているつもりです」と述べ、「全国の教会の皆さんに祈っていただくようお願いします」と語った。