【CJC=東京】教皇フランシスコは12日、バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ大聖堂で、オスマン・トルコ帝国末期の1915年ごろに150万ものアルメニア人が殺害された事件から約100年になるのに合わせてミサを行い、事件を「ジェノサイド(集団虐殺)」だったと表現した。
AFP通信などによると、教皇は過去1世紀の間に人類は大きな悲劇を3つ経験したと指摘。元教皇ヨハネ・パウロ2世らが署名した文書を引用する形で、キリスト者が多数派だったアルメニア人の殺害を、ホロコースト(ナチス・ドイツのユダヤ人大虐殺)、ソ連最高指導者スターリンの大粛清と並ぶ「前世紀の前代未聞の3大惨劇」と位置付け、「20世紀最初の虐殺と広く認識されている」と述べた。虐殺と認めないトルコを批判する形になった。
欧州諸国をはじめ多数の国が「ジェノサイド」を公式に認定しているが、トルコ側は殺害を認めるものの、「部族間衝突の犠牲者」などとして「虐殺」を否定している。
教皇は昨年11月、国民の大多数がイスラム教徒のトルコを訪問し、異宗教間の融和を訴え、過激派組織「イスラム国」(IS)によるテロや暴力の根絶に向けてイスラム圏との関係強化を図ったばかり。
教皇は自身の言葉で事件を「ジェノサイド」と表現してはいないが、サンピエトロ大聖堂という場で、アルメニアに関連して「ジェノサイド」という文言を使ったのは初めて。アルメニアは301年、世界で最初にキリスト教を国教としている。
教皇は、ISなどによるキリスト者迫害を強く非難しており、アルメニアの多数のキリスト者に対して配慮を示したと見られる。「弱者に寄り添うとの考えから、事件から100年の節目に過去の過ちを認めるよう促す意向があるのでは」と推測する向きもある。
トルコのメブリュト・チャブシオール外相はツイッターで、「教皇の発言は歴史の現実からかけ離れており、受け入れられない」と非難。外務省は首都アンカラ駐在のバチカン大使館に説明を要求し、不快感をあらわにした。