東方諸教会・非カルケドン派の一教派であるアルメニア使徒教会は、アルメニア人大虐殺100周年の日である4月23日、150万人ともいわれるその犠牲者たちを列聖するという。
同教会の指導者であるガレギン2世(全アルメニアの最高総主教・カトリコス)は、1月29日にアルメニアの首都エレバンで開かれたアルメニア人大虐殺100周年記念に関する国家委員会で発表したメッセージの中で、「2015年は、アルメニア人大虐殺の犠牲者たちの列聖のための明快な手続きをもってわれらの生活の中に始まった。すでに知られている通り、アルメニア人大虐殺100周年である4月23日の時に、われらの使徒聖教会は荘厳な儀式で、聖人の位を、信仰と祖国に対する愛のために自らの命を犠牲にしたわれらの殉教者たちに授ける」と述べた。
「われらの殉教者たちのとりなしはわれらの民族の生活を新しくするであろう。彼らの霊的な行いを記念することは、われらの国の子どもたちが神の愛によって生きるよう促し、そして愛国精神をもって、われらの権利の保護を強め、われらの国を強くし、われらの国民のために明るい未来を創るであろう」と、ガレギン2世は続けた。
ガレギン2世はまた、このメッセージで「アルメニア人大虐殺100周年は要求や補償のためのわれらの正義に基づく闘いにおける新しい一里塚である。われらの国は今日、封鎖や戦争の脅威、そして国際的な場におけるトルコによるアルメニア人大虐殺の認定を求める試みの失敗といった、多くの問題や困難に直面しているが、決意をもって正義のために自らの闘いを続ける。アルメニア人大虐殺は多くの国々や令名の高い組織によって認定され非難されており、それに対してわれらは感謝してはいるものの、アルメニア人大虐殺から100年たって、われらの殉教者たちの血とわれらの失われた祖国、われらの教会、そしてわれらの数えきれない文化的価値の破壊に対する正義は、まだ回復されていない」とさらに記した。
「われらの全国民の公正な期待は、トルコがその大虐殺を認定した国々に加わり、自らの歴史を直視することだ。トルコの国家に責任を求め、裁判所で法的要求をするわれらの国民の背景にある動力源は、嫌悪や敵対心ではなく、正義が回復されるのを見届けたいという熱望と要求である。トルコはアルメニア人大虐殺について今日に至るまでさまざまな手法や欺瞞を使って否認主義政策を続けている。これと同じ振る舞いの新たな表れが、大虐殺100周年と同じ日と年である4月24日のガリポリの戦いのトルコ当局による100周年宣言であり、それは明らかに世界の関心をそらしアルメニア人大虐殺の1世紀記念がもつ意義を最小化することを目的としている」と、ガレギン2世は指摘した。
ガレギン2世はそのメッセージで、世界中のアルメニア人に対し、「あらゆる取り組みや資源を用いて、そのような行為の本性やトルコの否認主義政策がもつ精神と目的を、市民・国そして国際的レベルで明らかにし、そしてアルメニア人大虐殺の認定と非難、そして正義のために圧力をかけ続ける」よう勧告している。
「アルメニア人大虐殺の100周年記念は、正義の回復を求める要求であり、世界中で犯された全ての大虐殺やはびこるテロリズム、そして最終的には人道と良心に対する罪についての非難を強く求めるものである」とガレギン2世は述べた上で、次のように訴え、主張した。「アルメニア人大虐殺の100周年記念は世界に対し、彼ら自身の利益のために、人々の命の犠牲や人権の侵害に終止符を打つよう呼びかけるものである。人類と世界の安全かつ通常の生活を歪ませる犯罪は、アルメニア人大虐殺の普遍的な非難の遅延から派生する結果である」
ガレギン2世は、「われらはアルメニア人大虐殺の100周年記念に関する全アルメニア人宣言の採択を歓迎し、われらの感謝をその起草委員会の委員たちに伝えるものである」と付け加えた。
「われらの使徒的聖教会は、世界中のアルメニア人の潜在的可能性と一致を強めつつ、祖国や全国組織・機関とともに、アルメニア人大虐殺の認定とその大虐殺の影響の解消のために、正義に基づく力を合わせ続けるとともに、国際的および教派間の場で自らの努力を続ける」と、世界教会協議会(WCC)議長団の一人でもあるガレギン二世は記した。
このメッセージは、「われらは全能の神が全人類に平和を賜るように、そして全世界が連帯と人類愛を強めるよう祈る。主がわれらの民族を信仰において一致させ続け、平和な空の下にわれらの祖国を保ち、全てのアルメニア人と一致させ、われらの国を強くし、福祉と進歩においてわれらの国の発展を確立してくださるように。われらの主イイスス・ハリストス(イエス・キリスト)の愛と慈しみがあなた方そして皆とともにあるように、アーメン」という祈りをもって結ばれている。
アルメニア使徒正教会も加盟しているWCCは2013年11月8日、韓国の釜山で開かれた第10回総会で、「アルメニア人大虐殺100周年記念に関する覚書」を公的課題委員会報告書の一部として採択した。
この覚書で同総会は、1.2015年に、100周年記念の日である2015年4月24日あたりに、アルメニア人大虐殺の認定と補償に関する国際会議を、とりわけWCCの加盟教会の参加をもって、ジュネーブで開催する。2.この国際会議との関連で、アルメニア人大虐殺の犠牲者たちを憶えるエキュメニカルな祈りの礼拝を行う。3.WCCの加盟教会に対し、この国際会議の日の頃に、アルメニア人の殉教者たちを憶えて、またアルメニア人大虐殺の認定のために祈るよう招く、という3つの項目を総幹事に求めるとしている。
なお、アラム一世は1991年から2006年までWCC中央委員会の議長を務めたほか、1997年に来日し、日本キリスト教協議会(NCC)を訪問した。
一方、トルコの外務省は「大虐殺に関するアルメニア人の主張」と題する英文ウェブサイトで、この大虐殺について否定的な見解を示している。