本紙では、1月27日と3月13日にプロテスタントの著者によるキリスト教入門書について記事で取り上げたが、今回はカトリック信仰の入門書で、しかも日本の禁教令時代の3月17日の信徒発見から150周年を記念して同日に発行された『ともにこの道を キリスト道 入門書』を紹介する。
本書は、“Our Journey Together”(『共に歩む旅』)という原本の考え方に従って作られたもので、イエスの2人の弟子たちがエマオへ行く途中、復活したイエスが同伴していろいろ教えた場面や、イスラエルの民がエジプトからカナンの地に旅する場面からもイメージされているという。その由来については、「すなわち、信仰を同じくする民が、老いも若きも互いに教え合い、学び合いながら信仰の旅を続けるということです」と説明している。
とりわけ、本書をカトリック長崎大司教区が作った理由について、「浦上四番崩れで日本各地に流配された私たちの信仰の先輩たちは、流配されたことを『旅』と呼びましたが、このテキストのタイトルは、私たち長崎教区にある者にとっては、ふさわしいもののように思えます」と述べているのが印象的だ。
第1課「神さまとは、どんな方ですか」から第28課「永遠のいのち」まで、28の課からなる本書。対象者は、第一に「信仰入門者」であり、第二に「堅信以降の信徒」。つまり、キリスト者の信仰の成熟のためのものだとしている。
もちろん、カトリック教会では信仰入門者のためのカテキズムというものがあり、カトリックの要理を教えるという従来の教育がある。しかし、本書はそうした一方的なものではなく、入門者共同体の参加者が皆で学び支え合い、信仰と生活の一致を図るという点に特徴があるという。
もっとも知的整理という面では、若干、難があることも事実であると述べており、従来の知的説明型の学びと合わせて本書を用いると、さらに重層的で効果的な学びが期待されるという。
一方、本書には「洗礼の準備はこの一冊で十分」とも記されており、これからカトリックの洗礼を受けようと考えている人には適した本だといえるだろう。
なお、改訂初版である本書は、もともと2003年に韓国・ソウル教区の許しを得て、小共同体の研究・開発のために長崎教区で翻訳したもの。その後の試用の結果、07年に一部を改正、10年には『共に歩む旅』入門講座や各共同体での試用結果を織り込んで改正した。さらにこうした試用実績を織り込み、改訂したのが本書だという。
一人旅ではなく、共に“キリスト道”を歩みたいという方々は、本書を手に取ってみてはいかがだろうか。
『ともにこの道を キリスト道 入門書』(改訂初版):カトリック長崎大司教区小共同体推進室編、サンパウロ、2015年3月17日発行、定価1400円(税抜)