日本で1873年にキリスト教禁止令が解かれる少し前。1865年3月17日、完成したばかりの大浦天主堂(長崎市)でフランス人宣教師プティジャンが祈っていると、訪ねてきたある女の村人が「ワタシノムネ、アナタトオナジ(私の宗教はあなたと同じ)」と告白した。約250年もの間、迫害に耐え信仰を守り続けてきた隠れキリシタンが発見された瞬間だった。この出来事は、当時のローマ教皇をして「東洋の奇跡」と呼ばせるほど、驚きと感動をもって迎えられた。
この「信徒発見」から、今年は150年の節目であることに合わせ、特別展「聖母が見守った奇跡」が19日、長崎歴史文化博物館(同)で始まった。禁教と弾圧の歴史の中で、旧長崎奉行所から没収された隠れキリシタンたちのロザリオや聖人像などが一挙に公開されている。
「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の世界文化遺産登録に向けた国内推薦も決まり、追い風にしようと企画された。会場には、キリスト教と長崎の関わりをテーマに、フランシスコ・ザビエルの布教から信徒発見までの約300年の歴史を物語る資料約550点を展示している。
また、イタリア人宣教師が逮捕された際に押収された国指定重要文化財の「聖母像(親指のマリア)」が、3月11日まで公開されるほか、信徒発見の日に当たる3月17日からは、教科書などでもおなじみの国指定重要文化財「聖フランシスコ・ザヴィエル像」の実物も展示されるという。
19日に行われた開会式には、中村法道長崎県知事や田上富久長崎市長らが出席。カトリック長崎大司教区の高見三明大司教は、「禁教時代はキリスト教に対する大きな誤解を招いた時期だった。信教の自由を守るためにもキリスト教を知らない方にも展覧会に来て知っていただきたい」(読売新聞)などと話した。
今回展示されている約550点の中には、東京国立博物館が所蔵する旧長崎奉行所宗門蔵に保管されていた潜伏キリシタンからの押収品約200点をはじめ、五島列島、平戸、島原、長崎市外海地区などの特色ある関係資料までを一挙に公開している。また、1585年に天正遣欧少年使節が謁見し、ロシアと日本での宣教活動を推進したローマ教皇、グレゴリウス13世の肖像画(上智大学キリシタン文庫蔵)も展示されているが、今回初公開だという。
19日から23日までの間に、延べ1000人を超える人々が来場。同博物館の広報担当者は「クリスチャンもそうでない方も、長崎の教会郡の世界遺産登録への機運と共に関心を持っていただけているようです」とコメントした。
問い合わせは同館(電話095・818・8366、FAX:095・818・8407)まで。
■「聖母が見守った奇跡」展
日時:2月19日(木)~4月15日(水)※3月12日(木)は休室(3階企画展示室以外は開館)
開館時間:午前8時半~午後7時(最終入館:午後6時半)
観覧料:一般800円(640円)、高校生以下無料
※( )内は前売り及び15名以上の団体、身体障がい者手帳、療育手帳、精神障がい者保健福祉手帳持参者の料金。