2. センス・オブ・プロポーション
「兄たちは彼をねたんだが、父はこのことを心に留めていた」(創37:11)
父ヤコブが、息子たちの誰よりもヨセフを愛したのは、ヨセフが年寄り子であったばかりでなく、7年に7年を加え、忍耐の限りを尽くして得たラケルの子でもあったからでしょう。
ヨセフが兄たちの「ねたみ」を買う直接の引き金となったのは、ヨセフが兄たちの悪いうわさを父ヤコブに告げ口したからでした。兄たちの「ねたみ」は「憎しみ」となり、言葉に現れました。兄たちは「彼と穏やかに話すことができなかった」(創37:4)
さらに、ヨセフが見た夢――太陽、月、11の星が麦束を拝んだ、つまり親と11人の兄弟がヨセフを拝むようになる――を得意げに語ったので、憎しみを増幅させてしまいました。さすがに、父ヤコブはヨセフを叱りしました。しかし、感情任せにしないで、「このことを心に留め」(創37:11)置きました。
時を経て、父ヤコブは兄たちの言葉が信じられなくなります。ヨセフがエジプトからよこした迎えの車を見たとき、父ヤコブは「心に留め」置いていたことは主のみこころなのだと確信し、エジプトへ出発します。ベエルシェバに来たとき、幻の中で「ヤコブよ、ヤコブよ」と神は呼ばれました。「はい、ここにいます」と答えるヤコブに、主はまさに今こそみこころ実現の時と告げられたのでした(創46:3、4)。
現在、センス・オブ・プロポーション(sense of proportion)――大局に立って、物事を捉え、解決する――の必要性が叫ばれています。父ヤコブは、私情に振り回されることなく、大局、主のみこころに立って問題を解決し、家族を治め、民族の将来を導きました。
父親の権限は大いなるものです。以下の点を踏まえて、父親の責務を果たしてまいりましょう。
- 様々な感情が起きるのは仕方がない。しかし、感情に任せるな。
- 主のみこころを求めよう。
- 問題点をはっきりさせよう。
- 早期に解決できることと、時間をかけて解決すべきことを分別しよう。
- 枝葉にこだわらず、大目に見る訓練を自らに課そう。
- 「はい、ここにいます」と言える主にある自分を絶えず確認しよう。
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前田基子(まえた・もとこ)
イエス・キリスト緑の牧場教会(東京)で救われ、玉野聖約基督教会(岡山)から献身。生駒聖書学院卒。生駒聖書学院副院長。エリムキリスト教会牧師。ABCラジオ放送「希望の声」・テレホンメッセージ「希望の声」(074・373・3740:ゼロナシ・ミナサン・ミナヨレ)牧師。