日本福音主義神学会の第14回全国神学研究会議が、4日から奈良県生駒市の関西聖書学院で始まった。「福音主義神学、その行くべき方向―聖書信仰と福音主義神学の未来―」をテーマに、福音主義神学の定義や、福音主義神学が独立した神学としてありうるのか、といった問いを取り上げ、6日まで続く。
同学会は1970年、聖書の十全霊感を信じる福音主義キリスト教の立場に立つことを共通の教義とし、教会の健全な成長と発達のために奉仕することを目的に設立された。現在の会員数は400人を超える。
開会礼拝では、神戸ルーテル神学校長で同学会西部部会理事長を務める正木牧人氏の司会のもと、関西聖書学院長の大田裕作氏がメッセージを語った。
その後行われた神学生集会では、関西の神学校の代表生6人が、「福音主義神学に期待するもの」をテーマに原稿を読み上げた。「日本の教会における神学的な指針となってほしい」「神の豊かさを表現するものとなってほしい」「本音の議論をしてほしい」などといった様々な意見が出された。時折率直なコメントが出されると、場内は沸き立ち、神学生によるこの集会はなごやかな雰囲気の中で幕を閉じた。
1日目夜のプログラム「研究発表1」では、新改訳聖書刊行会の翻訳編集委員長で聖書宣教会教師である津村俊夫氏が「福音主義神学の聖書釈義」と題して、旧約聖書学の観点から講演を行った。津村氏は、「閉塞状態にあるといわれる今日のキリスト教会に必要なことは、まさに『みことばへの確信』と『聖書を読む力』を取り戻すこと。教会が聖書を生み出したのではなく、聖書が教会を生み出したことを忘れてはいけない。聖書こそ、教会がよって立つ土台であるからです」と語った。
その後、津村氏への応答として、リバイバル聖書神学校校長の山崎ランサム和彦氏が新約聖書学の観点から講演。「生ける神の言葉である聖書に忍耐強く聞き続ける必要、そのための原典を読む力を養う必要がある、というのはまさに正論であり、心から同意するものである」とした上で、「使徒たちは旧約聖書が導く救済史のクライマックスがイエス・キリストであることをすでに知っていたがゆえに、特定の旧約テキストがイエスを指し示していることが、たとえ歴史的・文法的釈義からは導けなくても理解できた、ということではないか」と語った。
そして、「新約記者たちの聖書解釈法は、現代福音主義の標準的釈義方法である、歴史的・文法的方法の枠に収まるものではない」「これからの福音主義の釈義は、歴史的・文法的方法も包含しつつ、より自由で豊かな聖書の読み方の可能性を追求していく必要があると思われる。新約聖書は、まさにそのような聖書解釈のモデルを提供しているのではないだろうか」と語った。
全国神学研究会議は今後、2日目には研究発表2(基調講演「福音主義神学における教理」:関野祐二氏、応答:正木牧人氏)と、研究発表3(基調講演「福音主義神学と歴史・実践」:リチャード・ギャンブル氏・藤本満氏、応答:金井由嗣氏)、また研究発表1〜3の内容に分かれてのパネルディスカッション形式の分科会が行われ、最終日の6日には分科会の総括発表が行われる。