昨年9月にルーテル学院大学図書館(東京都三鷹市)で発見された、1630年に印刷されたルター訳の旧新約聖書「メリアン聖書」の修復作業が終了し、26日に修復作業を行っていた専門会社から同図書館に同聖書が引き渡された(関連記事:ルーテル学院図書館で1630年印刷のルター訳旧新約聖書発見 来年復活祭頃には修復終了)。
今回発見されたメリアン聖書は、ドイツを代表する版画家・製図家であったマテウス・メリアン(1593~1650)の銅版による挿絵が200以上挿入されており、17世紀の聖書としては、その挿絵の印刷史、美術史上の両方において傑作だと言われている。
日本福音ルーテル教会の「宗教改革500年関連ニュース」によると、同聖書は4月にはルーテル学院内で公開され、9月23日に行われる「一日神学校」では、参加者向けに同聖書の特別セッションや展示が行われる予定だという。
同図書館は昨年耐震工事を行い、その際、図書館の4階に積み上げられていた未整理図書の中から、1630年にフランスのストラスブール(ドイツ語名:シュトラスブルク)で印刷された大判のメリアン聖書が発見された。未整理図書として40年近くかなり高温多湿の空間に放置されていたため、多少の痛みや虫食いがあり、これまで修復が専門家の手にゆだねられていた。
ルーテル学院大学・日本ルーテル神学校名誉教授の徳善義和氏は、宗教改革500年関連ニュースの記事の中で、「宗教改革500年記念に向かう今、ルター訳の聖書がどのような形で民衆に親しまれ、手許に置かれたかを示す、よい実例を示すことになろう。この聖書は復刻版も出版されていて、相当の値というから、今回のオリジナルは、値がつかないほどとは言えないものの、愛好家が見ればやはり唸らずにはおれない古書と言えるのではないだろうか」と、今回発見されたメリアン聖書の価値について語っている。
一方、徳善氏は「ルターの時代から約80年、ルター自身の時には付いていなかった節がついているなどは、聖書の普及という点でも興味深い推理のきっかけを与えてくれるものである」と、聖書普及における歴史的観点からも同聖書が重要な資料となることに期待を示した。