米国内国歳入庁(IRS)による、米国内宗教指導者らが説教壇上で議員立候補者を後押ししたり、信徒らと共に政治の話題について議論するのを規制する動きに対抗するために、10月2日の主日に、400名以上の米教会牧師らが説教壇上で政治の話題について語る行事が行われようとしている。9月30日、米クリスチャンポスト(CP)が報じた。
同日は米クリスチャン法律家による同盟であるADFによって、説教者の自由を守る日曜日とされており、毎年小規模ながら行事が行われてきた。今年の同行事への参加者数は、昨年の4倍以上にも上る予定であるという。昨年は、同行事に100名の米牧師らが参加したが、今年の同行事への事前登録者数はすでに475名以上にもなっているという。
ADFは諸教会の信仰表現を保護するための説教者のイニシアチブの一環として、「説教者の自由を守る日」としての日曜日を制定している。ADFの広報担当者であるエリック・スタンレー氏は米CPの取材に対し、「ADFは過去3年間の同行事においてはIRSがどう反応するかを観察するために、恣意的に小規模なものとしてきたのです」と述べた。
今年10月2日に開催される説教者の自由を守る日の行事では、事前に参加登録した牧師らによる、聖書の御言葉と政治、議会議員候補者について語っているそれぞれの動画を会衆の前で長し、それらの動画をIRSに送信することも奨励されているという。
ADFはIRSがガイドラインを定める宗教指導者の言論規制に対し、これらの諸教会、ミニストリー牧師らの動画を用いることで反対する運動を起こそうとしている。ADFは米国内の信仰表現の自由が脅かされることなく、米国憲法修正第1条に基づいて守られ続けるように注意深く米政府の動きを監視している。
説教者の自由を守る日のプロジェクトは2008年に米国内33人の牧師らの働きによって始められた。米IRSのガイドラインによると、教会で政治の話をするならば、教会およびミニストリーの活動に対する免税措置が外される可能性があるという。IRSの教会および宗教団体のステータスで免税措置を受けるガイドラインとして「政治活動資金や、特定の政治家を後押しする活動を行わないこと」が挙げられている。
これまで説教者の自由を守る日の行事に参加してきた牧師らの中で、免税措置が解除された事例は一件もなかったものの、一部教会では、教会内での聖書的価値観と政治に対する見解について調査を受ける可能性があるという。
米国内の教会の具体的な事例としては、同性愛や中絶に対する議会議員候補者の立場について、説教壇で聖書の御言葉と照らし合わせて説教者が見解を述べるだけで、IRSの調査の対象となっている例が挙げられる。2009年には、米カリフォルニア州の同性愛者を保護する団体がIRSに対し、メイン州ポートランドのカトリック教区が同性愛を保護する州立法に反対する会合や署名を行っているとして訴えていた。
無神論者らの活動が高まる中、現在米牧師らは、説教者の言論の自由に対する政府の規制が強まることに対する懸念を高めている。スタンレー氏は「牧師先生方は、説教壇上で自由に語ることのできる権利を保護する活動により積極的に関わろうとされています」と述べている。
米調査会社ライフウェイが今年に入って、米国内千人の牧師らに対しインタビューを行った結果、そのうち86パーセントの牧師らが「米政府が、議会議員候補者の立場が聖書の見解と異なるときに、説教壇上で候補者の立場について批判すること、および聖書の見解と合致するときにその候補者を後押しすることを規制する動き」に対して反対していることが示されたという。
米南部バプテスト協議会牧師で米CPの編集責任者でもあるリチャード・ランド博士は、「IRSの宗教指導者の言論に対して規制は、意味のない規制であり、廃棄されるべきであると信じています。明らかに米国憲法修正第1条を濫用したものです。牧師たちは、政治問題について言論する自由があるべきであり、聖書の御言葉に照らし合わせて語る権利があるべきです」と述べている。
一方で同博士は「牧師は説教で特定の政治家を後押しするべきではありません。南部バプテスト協議会では牧師および教会が特定の候補者を後押しするようなことはするべきではないと信じています。候補者それぞれが支持者を得、彼らの価値観や信条を引きつけていくべきであると信じています。牧師は説教壇上で議会議員候補者について語る場合は、公職の立場としてふさわしいことを聖書的視点から支持するために語るべきであると信じています」と述べている。
一方ADFは、説教壇上で議会議員候補者が聖書的視点に即してふさわしいか、ふさわしくないかの両方の場合について語ることが等しく許されるべきかについての回答は拒否している。ADFの同イニシアチブは壇上で語られる内容の具体的是非ではなく、教会の中で行われる言論に対する意思決定を誰が行っていくかに焦点を当てたイニシアチブであるという。ADFは今後毎年説教者の自由を守る主日の行事を発展させていき、IRSおよび米議会の反応を見る予定であるという。