英国で昨年10月1日に発効された「平等法」によるキリスト教信仰表現への規制により、英ブラックプールにあるクリスチャンカフェにおいて、店内に聖書の御言葉を表示するのを禁止する命令が英警察から下された。26日、米クリスチャンポスト(CP)が報じた。
同カフェを訪れた客のひとりが、店内に同性愛を戒める内容の聖書のメッセージが表示されているのを発見し、同性愛者の感情を害するものであるとして英警察に訴えたことを受け、同カフェを経営するジェームズ・ムラリーさんが19日、英警察当局によって店内に今後も継続して聖句を表示し続けるのを止めるように命じられたという。
英デイリー・メール紙によると、同カフェでは26時間分の聖書の内容について説明するDVDが取り揃えてあり、壁に取り付けてある小さなテレビを用いて再生させていたという。
同日ムラリーさんは、何の予告もなしに突然二人の警官がクリスチャンカフェに入ってきて、同カフェの客のひとりがテレビの中で流されている聖句が同性愛者の感情を害するものであると告発したことを知らされたことに衝撃を隠せないでいたという。警官らは、異宗教者に嫌悪感を生じさせることについて1986年に制定された英公共秩序法に違反するとムラリーさんに通知したという。
さらに警官はムラリーさんに、カフェ内で今後も同性愛者の客が訪れた場合に感情を害する可能性のある聖句をDVDで放送し続けるなら、逮捕する可能性もあることをほのめかしたという。
ムラリーさんは、警官が来た時の状況について、「お客様がおられる目の前で警官に手錠を掛けられて店外に連れ出されることを恐れていました。そのためすぐにテレビの電源を切りました。警官たちは今後もカフェ内の様子を監視し続けて行く予定であると告げました。まるで自分が犯罪者でもあるかのように感じられました」と述べている。
ムラリーさんによると、店内のテレビで同性愛者の感情を害する聖句のメッセージが流されていたことを告発した人が誰であるか、またDVDで流れていた新約聖書の聖句の中のどれが該当したのかについては警官から知らされなかったという。
ムラリーさんの推測では、ローマ書1章26節~28節「自然の用を不自然なものに代え男が男と恥ずべきことを行うようになった、神を知ろうとしたがらないので、良くない思いに引き渡された」と書かれてあるところがDVDで流されたことが同性愛者の感情を害したのではないかという。
ムラリーさんは警官の警告を受け、クリスチャンの信仰の自由を保護する慈善団体であるクリスチャン・インスティテュートに法的保護を求める道を模索しているという。
クリスチャン・インスティテュートの法律顧問を務めるサム・ウェブスター氏は「ムラリーさんに法的なアドバイスを行っていく予定です。彼は表現の自由と信仰の自由を警官によって害されたとして法的に訴える権利があります」と述べ、ムラリーさんのクリスチャンとしてカフェを運営する立場を保護している。
ムラリーさんは「私は誰を侮辱したり攻撃したりしようとしているわけではありません。しかし聖書は聖書なのです。英国は寛容で多様な要素を含む国家であることは常に教えられてきました。しかしその中で私たちに真実を教えてくれたキリスト教の価値観が側面に追いやられてしまっているような気がしています」と述べている。
英国ではクリスチャンが自身の信仰を公的な場所で表現しただけで法的な問題として訴えられたり、職場を追いやられるような事件が「平等法」が施行されて以来数十件生じており、異なる信仰をもつ人々の感情を害さないことが先行し、クリスチャンの信仰の表現の自由が厳しく規制されるようになってしまっていることが懸念されている。