【CJC=東京】ノルウェーのノーベル賞委員会は10月9日、2009年のノーベル平和賞をバラク・オバマ米大統領(48)に贈ると発表した。同氏が進める国際協調外交と「核なき世界」に向けた姿勢を評価し、「より良き未来に向けて人々に希望を与えた」ことを授賞理由に挙げている。
「核なき世界」待望の国際世論のうねりが欧州を中心に広がりつつある中で、今年1月に就任したばかりのオバマ氏を選んだのは、核超大国が対話重視の国際協調路線を追求するという理想の実現を、小国ノルウェーの委員会が熱望していることの表れとも見られる。
しかし核軍縮・不拡散に向けた動きは始まったばかり。アフガニスタンでの米国の対テロ戦争は泥沼化しつつあり、国内的には医療保険改革や雇用対策など難題に直面している中で高い支持率も、政治の現実を前に陰りが見え始めていた時だけに、受賞で「オバマブーム」復活となるか注目される。いずれにしてもオバマ氏への期待は、重圧としてのしかかることは必至。
米国内では「オバマ政権は全世界の人々の希望を体現している」(カーター元大統領)などと歓迎の声が上がったが、保守派からは「大統領は受賞を辞退しろ」「ノーベル賞委員会は自らの権威を失墜させた」など強硬な批判が相次いだ。
国際的にもキューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長が受賞を賞賛、ノーベル平和賞受賞者のダライ・ラマ十四世もオバマ大統領に同賞受賞を祝うメッセージを送るなど好意的な意向を示す一方、アフガニスタンの武装勢力タリバンは「(アフガンでの)暴力を激化させ、多くの民間人を殺害した」と厳しく非難している。
ロシアの極右政党、自由民主党のジリノフスキー党首はオバマ氏に受賞を辞退するよう勧める書簡を送った。時がたてば米軍主導のイラク、アフガニスタンでの戦争などのため、平和賞ははく奪されるからだと説明している。
キリスト教界では、バチカン(ローマ教皇庁)報道事務所受賞を歓迎する声明を発表した。「この最も重要な認知が、とても困難ではあるが、人類の未来に向けた基本的な関わりを最高に勇気付けるものであり、期待できる結果を生み出すことになろう」と言う。
世界教会協議会(WCC)のサミュエル・コビア総幹事は、大統領に宛て歓迎の書簡を送った。「来年1月に就任する後継総幹事のオラフ・フィクセ=トゥヴェイト氏と共に、ノルウェーのノーベル委員会の決定に深く満足している」として、大統領の実父がケニア出身で、自らもケニア人であること、またトゥヴェイト氏もノルウェー人であることから、両国が今回の授賞に特別な関係があることを指摘した。
書簡は、全能の神の祝福が続くように、との挨拶で締めくくっている。