ミャンマー北西部チン州のカトリック教会が、ローマ教皇フランシスコにより大聖堂に指定されてからわずか約2週間後に、同国軍の空爆を受け、使用不可能な状態になった。
カトリック系のフィデス通信(英語)によると、空爆を受けたのは、同州南部ミンダットの「イエスの聖心教会」。同教会は1月25日、ハカ教区から分離する形で、教皇により新設されたミンダット教区の司教座聖堂(カテドラル=大聖堂)に指定された。しかし、それから2週間もたたない2月6日に、空爆の直撃に遭った。
現地の情報筋が同通信に語ったところによると、ミンダットはこの数カ月、2021年の軍事クーデター後に結成された武装勢力「チンランド防衛隊」(CDF)と国軍による衝突の舞台となっている。1月には、CDFがミンダットの「解放」を宣言するなどしていたという。
空爆は教会の建物に命中し、屋根とステンドグラスの窓が大破した。一方、司祭や信者らは治安の悪化や戦闘のため事前に避難しており、負傷者は報告されていない。教会の建物は使用不可能な状態だが、信者らは再建の意思を示しているという。
チン州は人口の8割以上がキリスト教徒で、全人口の9割が仏教徒とされるミャンマーでは、キリスト教徒が多数派を占める唯一の州。同通信によると、このうちミンダット教区が管轄する地域には、約36万人の住民がおり、カトリック信者は約1万5千人。同教区は23小教区(教会)で構成され、教区司祭48人のほか、修道士3人、修道女21人がいる。
ミャンマーでは国軍がクーデターにより政権を握った21年2月以降、紛争が各地で続いており、国連の発表によると、昨年12月までに6千人以上の民間人が死亡し、国内避難民は推定で350万人に上る。
ボルカー・ターク国連人権高等弁務官は、昨年6月に開かれた第56回人権理事会(英語)で、ミャンマーの現政府を「非合法の軍事政権」だとし、斬首や深夜の民家爆破などの残虐行為を行っていると非難。「人権の崩壊が猛スピードで続いている」と訴えていた。
現在の紛争は、国軍が4年前に起こしたクーデターにさかのぼるものだが、ミャンマーではそれ以前から、民族や宗教も含め複雑な要素が絡まった内戦が続いており、長年の問題となっている。