現地の人権団体によると、ミャンマーでは昨年2月の軍事クーデター以降、キリスト教徒が多く住む西部チン州と東部カヤー(旧カレンニー)州で、少なくとも教会47軒と教会関連施設15軒がミャンマー国軍により破壊された。
ミャンマーの反軍事政権メディア「イラワジ」(英語)が、「チン人権機構」(CHRO)と「カレンニー人権グループ」(KHRG)の情報として伝えたところによると、2021年2月から22年1月にかけて、チン州では約35軒の教会と15軒の教会関連施設が、カヤー州では約12軒の教会が破壊された。
ミャンマーは仏教徒が人口の9割を占めるものの、インドと国境を接するチン州はキリスト教徒が8割以上を占め、タイと国境を接するカヤー州もキリスト教徒が4割以上を占めている。しかし、この2州を含めキリスト教を信仰する人の多くは少数民族で、国境をまたいださまざまな紛争地域に住んでいる。
かつてビルマと呼ばれたこの東南アジアの国は、1948年に独立して以降、今も内戦が続いており、世界で最も長く内戦が続いている地でもある。昨年2月の軍事クーデター後は、少数民族の民兵組織が、民主化を求める抵抗運動を精神的に支持してきたことから、民兵組織と「タッマドー」と呼ばれる国軍の対立は激化してきた。
イラワジによると、国軍は昨年末から、地元住民の強い抵抗のため、チン州やカヤー州の民間人居住地域に対する砲撃や空爆も始めた。その中で、キリスト教や仏教の宗教施設は民間人が避難場所として利用することが多いことから標的にされているという。
CHROの報告(英語)によると、最近では3月末に、チン州の州都ハカに拠点を置く国軍の戦術作戦司令部配下の第266軽歩兵大隊の部隊が、ハカ近郊のゾクア村にあるサンフェン記念教会に侵入し、略奪を行った。
また、ロイター通信(英語)によると、昨年のクリスマスイブには、カヤー州の村で、国軍が老人や女性、子どもを含む国内避難民30人以上を殺害し、遺体を焼く事件が発生している。KHRGは事件翌日、同州フプルソのモソ村近くで犠牲者の遺体を発見したと述べている。
反軍事政権の民兵組織では最大規模の「カレンニー国民防衛隊」(KNDF)の司令官は当時、同通信に対し、「われわれは、すべての遺体が子どもや女性、老人を含む、異なった大きさのものであったのを見て、非常にショックを受けた」とコメント。地元の住人は、「私は今朝、見に行きましたが、焼かれた遺体や、子どもや女性たちの服が散乱していました」と述べていた。
匿名を条件にイラワジの取材に応じたカヤー州のキリスト教指導者は、国軍は戦闘が行われていない状況でも教会に対して砲撃を行い、時には戦闘地域から離れた場所にある宗教施設に対しても攻撃を加えていると非難。「彼らは意図的に教会を攻撃しています。キリスト教徒たちにとって神聖な教会を攻撃することによって、精神的な圧迫を加えているのです。私は彼らの悪意を強く非難します」と話している。