ミャンマー国軍が3日、同国東部のシャン州クトカイ地区にあるバプテスト派の神学校を砲撃し、寮にいた男子学生少なくとも4人が負傷した。米迫害監視団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC)が発表した。
ICCの発表(英語)によると、神学校はカチンバプテスト連盟(KBC)が設立したもので、負傷した学生は寮にいた21歳から27歳までの4人。砲撃によって発生した破片などで負傷したが、いずれも命に別状はないという。
1948年以降、世界一長い内戦が続くミャンマーでは、2021年の軍事クーデター後、民主化運動家を支援する少数民族の民兵と、「タッマドー」と呼ばれる国軍の間で対立が激化している。紛争が行われているのは主に、インドやタイ、中国との国境沿いだ。
今回の砲撃による被害は、ソーシャルメディアに投稿された動画にも映っており、穴やくぼみができた窓や壁、穴が開いた学生の衣服などが確認できる。また別の動画には、負傷した学生が治療のため外に連れ出される様子が映し出されている。
地元の住民は、「国軍によるこのような攻撃は、キリスト教の神学校とカチン族全体を脅かしている」と話している。
仏教徒が多数派のミャンマーで、キリスト教徒が人口に占める割合は7パーセント強。一方、インドと国境を接するチン州、中国と国境を接するカチン州では、キリスト教徒が多数派となっている。また、タイと国境を接するカヤー州でも、キリスト教徒は人口のかなりの部分を占める。
「今回のカチン州の神学校に対する攻撃は、確かに事故ではありませんでした」と、ICCの東南アジア地域マネージャーであるジーナ・ゴー氏は話す。
「むしろ、カチン族の人々にとって信仰がいかに重要であるかを知っている国軍は、意図的にキリスト教の施設を狙ったのです。この卑劣な軍事政権は、国際社会によってこれ以上容認されるべきではなく、直ちに取り除かれる必要があります」
カトリック系のUCAN通信(英語)によると、今回の神学校への砲撃は、10月23日にカチン州パーカンで行われていたコンサートに対する空爆に続くもの。このコンサートに対する攻撃では、カチン族の有名ミュージシャンを含む少なくとも80人が死亡した。コンサートは、カチン独立軍(KIA)の政治部門であるカチン独立機構(KIO)の創立62周年を祝うもので、KIAのメンバーを含む数百人が参加していた。
ICCによると、ミャンマーでは国軍により2400人以上が殺害され、1万6千人以上が収監され拷問を受けている。
また、仏教民族主義的な軍事政権がクーデター以降、キリスト教徒を含む宗教的少数派を不当に標的とし、数百人に上る子どもたちを残忍に攻撃し殺害していることが、6月、国連などの複数の報告書により明らかになっている。
ミャンマーの人権状況に関する国連の特別報告者であるトム・アンドリュース氏は、当時の報告書(英語)に、「軍事政権による子どもたちへの執拗な攻撃は、ミャンマーの人々を服従させようとする軍司令官たちの堕落と、罪のない犠牲者に計り知れない苦痛を与えようとする意志を際立たせている」と記している。
アンドリュース氏は報告書のための事実調査において、子どもたちの殺害について、「子どもたちが殴られ、刺され、タバコの火で焼かれ、模擬処刑を受け、長い尋問の間に爪や歯を抜かれるなどしたという情報を得ている」としている。クーデター以降、国軍は少なくとも142人の子どもを殺害したと、報告書は付け加えている。
「国軍の攻撃によって25万人以上の子どもたちが避難し、1400人以上が恣意的に拘束された。報道によると、3歳未満の子ども数人を含む少なくとも61人の子どもたちが、人質として拘束されている。国連はクーデター以降、142人の子どもたちが拷問を受けたことを記録している」
迫害監視団体「オープンドアーズ」は、キリスト教徒への迫害がひどい50カ国をまとめた「ワールド・ウォッチ・リスト」(2022年版、英語)で、ミャンマーを世界で12番目に迫害がひどい国としている。ミャンマーの迫害レベルは仏教民族主義のため「非常に高い」とされている。また、ミャンマーは信教の自由を著しく侵害しているとして、米国務省から「特に懸念される国」に指定されている。