人口わずか6千人のサンクリストバル・アカサグアストランを治める町長ジャネス・オルドニェスは、その敬虔な信仰の故に、使命意識に燃え、町の治安と幸福のために尽力している。しかし、グアテマラのような国で正義を貫くことは、深刻な危険に自分の身をさらすことを意味する。(第1回から読む)
麻薬カルテルやギャングの活動は、グアテマラの社会に深刻な影響を与えている。治安の悪化により、観光業やビジネスが打撃を受け、経済成長が妨げられているのだ。また、住民は日常的に暴力や犯罪の脅威にさらされており、特に子どもや若者がその影響を受けやすい状況にある。
また、グアテマラの治安状況は、麻薬カルテルの抗争だけでなく貧困や社会的不平等とも深く関連している。多くの若者がギャングに参加する理由は、経済的な困難や教育の欠如に起因しており、これがさらなる暴力の連鎖を生んでいるのだ。政府は、教育や雇用機会の提供を通じて、これらの根本的な問題に対処する必要がある。
近年、敬虔な信仰の故にカルテルに対抗して命を落とした女性市長で記憶に残る人物に、メキシコのマリア・ゴロスティエタ氏がいる。彼女は2008年にティキチェオ市の市長に就任し、治安の悪化に対抗するために積極的に活動していた。
市長として、麻薬カルテルの影響を受けた地域での犯罪と戦う姿勢を貫いた結果、2度の暗殺未遂に遭遇し、夫が暗殺されるという悲劇が起きた。事件後、ゴロスティエタ氏は「神がお許しになる限り、私は何度でも立ち上がり、人々のため、特に助けを必要としている人たちのために戦い、計画やプロジェクトを遂行し、行動します」と宣言した。2度目の暗殺未遂のときには、銃弾を浴びて重傷を負ったのだ。
報道陣の前でシャツを脱いで傷跡を見せるなど、勇敢にして決然とした態度を見せた彼女だったが、最終的に2012年、武装集団に襲撃され、天に召された。この事件は、メキシコにおける政治家に対する暴力の象徴的な例とされている。彼女の信仰は、彼女の政治活動にも影響を与え、地域社会の安全を守るための強い意志として発露していたのだ。
ゴロスティエタ氏の死は、メキシコにおけるカルテルによる暴力の深刻さを浮き彫りにしたことで人々の記憶に刻まれている。彼女の正義感はその信仰の故であった。その死はもはや、単なる殉職以上のもの、つまり彼女の死は、主の教えに殉じたものであり、殉教者として数えられてもおかしくないのだろう。
このように、メキシコやグアテマラのような国では、麻薬カルテルと手を握らずに対抗することは、決して生半可なことではない。オルドニェス町長もまた、そのような命のリスクが伴う危険な使命に身を置いて公務に就いている。町長の身の安全を祈らずにはおれない。
時として国家権力を上回る力を有する麻薬カルテルの恐怖支配に終止符が打たれ、この地の福音宣教が進むように祈っていただきたい。
■ グアテマラの宗教人口
カトリック 53・1%
プロテスタント諸派 41・3%
無宗教 3・5%
土着の宗教 0・3%
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