中国当局が、「家の教会」と呼ばれる政府が認めていないキリスト教会に対し「詐欺」のレッテルを貼り、信教の自由を侵害しているとして、弁護士や教会指導者らが共同で非難声明を発表した。
声明(中国語)は「中国人権弁護士団」が11月30日に発表。当局が、中国山西省の家の教会「臨汾(りんふん)聖約家園教会」の牧師らに対し詐欺容疑をかけて迫害しているとして抗議するもので、12月14日までに92人が署名している。
声明は、家の教会が献金を集めることを当局が刑事的不正行為と同一視していると批判し、長年の宗教的実践を否定するものだと主張。旧約聖書と新約聖書の両方から引用し、教会への献金はキリスト教徒にとって礼拝の不可欠な一部であることを強調している。
また、信教の自由を保障する中国憲法第36条の遵守を求めているほか、世界人権宣言や自由権規約(中国は署名しているが未批准)などの国際条約の遵守を求めている。
国際人権団体「世界キリスト教連帯」(CSW、英語)は、中国では2017年に宗教事務条例が改正されて以降、当局が家の教会を標的に詐欺容疑を適用するケースが増えているとし、声明への支持を表明している。
CSWは、中国における迫害のプロセスには3つのステップがあるとし、詐欺容疑の適用はその3番目だとし、次のように述べている。
「(家の)教会はまず(宗教)法人として登録することを禁じられます。そして、違法なグループまたは違法な集会だとされ、従って、教会の指導者も違法な聖職者だと見なされます。最後には、家の教会が献金を集めることは詐欺と見なされるのです」
詐欺罪で有罪判決を受けた教会指導者は、10年を超える禁錮刑に処せられる可能性がある。
中国当局は22年8月、臨汾聖約家園教会の信者ら一行が大人約30人と子ども約40人で野外行事を行っていたところを取り締まり、同教会の李潔牧師と韓暁棟牧師らを拘束した。その後、両牧師らは指定場所での「居住監視」に置かれ、体罰や睡眠剥奪を受けたという。当局は23年5月、両牧師らを詐欺罪で起訴したが、現在のところ裁判はまだ始まっていない。
声明には、臨汾聖約家園教会の信者4人も署名している。声明は、18年以降に詐欺容疑をかけられた他の家の教会の事例12件にも言及し、詐欺容疑の適用が当局による迫害のパターンを示していると指摘。家の教会の全ての活動が犯罪と見なされる恐れがあると警鐘を鳴らしている。