中国で18年にわたり収監されていた中国系米国人のデイビッド・リン牧師(68)がこのほど釈放され、米国に帰国した。リン氏は「家の教会」と呼ばれる中国政府が認めていない教会を支援していたが、突然拘束されて詐欺罪に問われ、終身刑を言い渡されていた。
米政治専門メディア「ポリティコ」(英語)によると、米国務省は14日、リン氏の娘に父親が釈放されたことを通知。リン氏は翌15日に、テキサス州サンアントニオの空港に到着した。
ポリティコによると、リン氏は国務省が中国で不当に収監されていると見なしている米国人3人のうちの1人。東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会議が7月にラオスで開かれた際、アントニー・ブリンケン国務長官と中国の王毅外相が会談し、リン氏の釈放について合意に至ったという。
また、リン氏の釈放の数週間前には、ジェイク・サリバン大統領補佐官が北京で王氏と会談。リン氏の娘はポリティコに、「(会談で)サリバン氏が私の父の事件を取り上げたのは知っています」と話した。
さらに、18日には米連邦議会で、中国で恣意的に拘束されている米国人に関する公聴会(英語)が開かれており、リン氏の釈放はその数日前に実現した。
在米対中キリスト教人権監視団体「チャイナエイド」(英語)によると、リン氏は宣教活動のため1990年代から中国を頻繁に訪れるようになった。
当時、中国政府は経済発展のため開放性を打ちだそうとしており、宣教活動に対する取り締まりは比較的緩かったという。しかし、2008年の北京オリンピックを前に取り締まりを強化。そうした状況の中、リン氏は06年、家の教会の会堂建設を支援していたところ、突然拘束された。そして、09年に詐欺罪で起訴され、一貫して無罪を主張したものの、同年に終身刑を言い渡された。
一方、中国政府はこれまで、リン氏の刑期を3回短縮しており、2029年には釈放される予定だった。
リン氏は中国生まれだが、米国籍を取得し、カリフォルニア州に居住していた。英公共放送BBC(英語)によると、中国は二重国籍を認めていないため、米中両方のパスポートを所持していても、中国では自国民としか見なされないという。