聖公会の宣教師によって創立された立教学院の創立150周年を記念する一連の行事が11日、立教大学(東京都豊島区)と近隣のホテルを会場に行われた。同大野球部出身の長嶋茂雄氏(読売ジャイアンツ終身名誉監督)の功績を顕彰するモニュメントの除幕式や感謝礼拝などが行われ、記念式典には、7日に協定を締結した同志社大学の小原克博学長のほか、早稲田大学の田中愛治総長や慶応義塾大学の伊藤公平塾長(理事長兼学長)らが出席した。
立教学院は、米国聖公会から派遣された宣教師であるチャニング・ムーア・ウィリアムズ主教(日本聖公会初代主教)が1874年、聖書と英学を教える私塾「立教学校」を開いたことに始まる。以来「キリスト教に基づく人間教育」を建学の精神に掲げ、現在では小学校から大学院までを擁する総合教育機関に成長した。
この日の記念行事は、記念樹の植樹式と、長嶋氏の功績を顕彰するモニュメントの除幕式で始まった。植樹された記念樹は、街路樹として親しまれているスズカケノキ(プラタナス)。立教大学の池袋キャンパス中央には、スズカケノキの並木道があり、「鈴懸(すずかけ)の径(みち)」と呼ばれている。同大卒業生の灰田勝彦氏による同名のヒット曲のモデルとして知られ、記念樹は「鈴懸の径」の中央地点(4号館前)に植樹され、長嶋氏の功績を顕彰するモニュメントは記念樹の前に設置された。
植樹式と除幕式には、立教学院の関係者や立教大学野球部の現役部員らが参加。同大の中川英樹チャプレンが司式を務め、立教学院の福田裕昭理事長、西原廉太院長・同大総長、同大野球部OB会の村山修一会長、同大卒業生でアナウンサーの徳光和夫氏の4人が代表して植樹を行った。
西原氏は総長に就任した2021年に長嶋氏と面会した際、立教大学のキャンパスの中で最も愛している場所を尋ねたところ、チャペルという答えが返ってきたエピソードを紹介。徳光氏は、モニュメントに刻まれた長嶋氏のメッセージ「立教の後輩たちへ」を代読するとともに、東京六大学野球で活躍する長嶋氏の姿に憧れて同大への入学を決めた思い出などを語った。
立教学院諸聖徒礼拝堂(チャペル)で行われた感謝礼拝では、ウィリアムズ主教が学んだ米バージニア神学校のイアン・マーカム学長が奨励を行った。
マーカム氏は、「教育機関は、理念というDNAを継承するものです。教育機関があるからこそ、理念は他者に伝えることができ、未来へとつなげることができるのです。教育機関がなければ、理念もまた死んでしまうのです」と述べ、教育機関の重要性を強調。また、イエス・キリストが弟子たちを送り出し、弟子たちがさまざまな共同体とつながり、奉仕することで教会が生まれ、そして教会から教育や医療など、さまざまな機関が生まれてきた歴史を話した。
ウィリアムズ主教については、深い敬虔さを持ち、祈りの習慣を大切にし、質素な生活を送り、信仰のためなら死をもいとわず、他者のために奉仕をした傑出した人物だったと紹介。立教学院だけでなく、日本聖公会や現在の聖路加国際病院、神学校、各種学校、そして数多くの教会の創立にも携わったことを話した。
その上で、「それぞれの世代の者たちには、この教育機関を大切にしていく責任が与えられています」と指摘。「彼(ウィリアムズ主教)がこの働きをなし得たのは、神が自分に求めておられると信じたからです。そのように、私たちもまた、立ち止まり、この働きを神にささげたいのです。私たちは、私たちの努力の中に、宇宙の創造主がおられることを信じているのです」と伝えた。最後には、ウィリアムズ主教の逝去日である12月2日に、米国聖公会で毎年祈っているという特祷をささげた。
礼拝ではこの他、立教学院諸聖徒礼拝堂の聖歌隊がOB・OGと共にアンセム(聖歌)を歌唱。また、創立150周年を感謝する祈りもささげられ、「どうかこれまでの私たちの歩みを祝福し、新たな決意と愛を私たちのうちに満たしてください。また、私たちに委ねられている教育・学術・研究の業がますますあなたの御心にかなうものとしてください」と求めた。
礼拝は、立教学院の各学校のチャプレンが共同で司式を行い、プロセッション(入堂行列)には、各学校の校長のほか、武藤謙一首座主教をはじめとする日本聖公会の主教や司祭らが参加。最後には、立教学院チャプレン長の広田勝一主教が祝祷をささげた。