中世・ルネサンス音楽研究の第一人者で、隠れキリシタンの祈りの歌「オラショ」の研究で知られる皆川達夫(みながわ・たつお)立教大学名誉教授が19日午後10時42分、横浜市内の病院で老衰のため死去した。92歳だった。葬儀・告別式は親近者のみで執り行う。喪主は、長男、瑞夫(みつお)氏。複数の国内メディアが22日、伝えた。
1927年、東京都(当時・東京市)生まれ。東京大学文学部卒業、同大学院修了。米国、ドイツ、スイス留学を経て、68年立教大学教授。芸術学博士(明治学院大学)。オラショの研究が評価され、78年にはイタリア共和国功労勲章を受章した。
オラショの研究では、今もなお隠れキリシタンの末裔(まつえい)が住む長崎県生月(いきつき)島を何度も訪問。楽譜に起こし、ラテン語への復元作業を行い、バチカン図書館や、来日宣教師の故郷であるスペイン、ポルトガルを訪問するなどして調べ、グレゴリオ聖歌に由来することを発見するなどした。
NHKラジオ第1のクラシック音楽の入門番組「音楽の泉」では、司会を今年3月まで31年にわたって務めた。「音楽の泉」も番組公式サイトで訃報を伝え、哀悼の意を表した。
著書に、『バロック音楽』『中世・ルネサンスの音楽』(講談社)、『キリシタン音楽入門:洋楽渡来考への手引き』『オラシヨ紀行』(日本キリスト教団出版局)、『西洋音楽ふるさと行脚』(音楽之友社)など。
立教大学キリスト教学会などが主催して2017年に行われた講演会では、「キリスト教と音楽のつながりは深い。教会には常に音楽があり、また音楽の歴史を語るとき、キリスト教は切っても切れない存在」などと語っていた。(関連記事:皆川達夫さんが語る隠れキリシタンの祈り「オラショ」 400年の時を超えて伝わる異国のグレゴリオ聖歌)