シグニスジャパン(カトリックメディア協議会)は27日、第48回日本カトリック映画賞に、風間研一監督の「ただいま、つなかん」を選出したと公式サイトで発表した。
「ただいま、つなかん」は、宮城県気仙沼市の唐桑半島に立つ民宿「唐桑御殿つなかん」を営む菅野一代さんと、東日本大震災の際に学生ボランティアとして被災地を訪れ、その後移住した若者たちの10年以上にわたる歩みを追ったドキュメンタリー。震災1年後に、テレビ報道番組のディレクターとして菅野さんと出会い、その後も取材を続け、プライベートでも「つなかん」を訪れてきた風間さんによる初の監督作。菅野さんと親交があり、現在も気仙沼市に通い続ける俳優の渡辺謙さんが語りを担当している。
シグニスジャパン顧問司祭の晴佐久(はれさく)昌英神父は授賞に当たって、次のようにコメントしている。
「『ただいま、つなかん』は、『復活』の映画だ。一見そこには、この世の絶望が映っているようにも見える。突然襲ってくる津波の悲劇や、愛する人との理不尽な死別。さらには、生活を破壊するウィルスの流行。現実の十字架は、あまりにも過酷だ。しかし、よく見るとそこには、絶望を優しく包み込む希望が映っている。復活を夢見て助け合う、笑顔の仲間たちが映っている。およそこの世のあらゆる映像は過去を映しているものだが、この映画には驚くべきことに、未来が映っている」
その上で、「第一級のドキュメンタリー映画」だと評価し、「いまなお試練の内にある人に復活の未来を見せてくれる、ときめく映画だ。日本カトリック映画賞にまことにふさわしいと、最大限の評価を与えたい」と述べている。
日本カトリック映画賞は、前々年の12月から前年の11月までに公開された日本映画の中から、カトリックの精神に合致する普遍的なテーマを描いた優秀な作品に贈られる賞。1976年に創設され、これまでにアニメ版「火垂(ほた)るの墓」(88年)や、「博士の愛した数式」(2005年)、「おくりびと」(08年)などが受賞している。
昨年は、盲ろう者(視覚と聴覚の重複障がい者)として世界で初めて大学教授となった福島智(さとし)さんと、盲ろう者とのコミュニケーション手段として「指点字」を考案した母・令子さんの実話を基にした「桜色の風が咲く」(松本准平監督)が選ばれた。
授賞式・上映会は7月6日(土)午後2時(同1時25分開場)から、星陵会館(東京都千代田区永田町2-16-2)で行われる。映画上映後の同4時20分からは、監督の風間さんと晴佐久神父の対談も予定されている。
■ 映画「ただいま、つなかん」予告編