教会が偽の改宗を認めることで、難民申請者を「支援」しているという批判が出ていることについて、自身も難民出身である英国国教会のグリ・フランシス・デカニ主教(チェルムスフォード教区)が反論した。
英国では1月31日、ロンドン南部クラパム地区で、女性(31)とその幼い娘2人が腐食性物質をかけられ、重傷を負う事件が発生した。女性は右目を失明する可能性があるとも伝えられている。
女性らを襲ったのは、アフガニスタンから難民として英国に渡ってきたアブドゥル・エゼディ容疑者(35)。女性の知人だったとされる。現在も拘束されておらず、監視カメラの映像から、テムズ川に飛び込み、その後死亡した可能性も指摘されている。
エゼディ容疑者はキリスト教に改宗したとし、教会の聖職者がそれを保証していたという。エゼディ容疑者は2016年、トラックの荷台に載って英国に不法入国。難民申請をしたが2度にわたり不許可となっていた。18年にはニューカッスルで性暴行事件を起こし有罪判決を受けたが、その後、難民認定されていた。
こうした中、前内相のスエラ・ブレイバーマン庶民院(下院)議員は、「全国の教会」が「産業規模の偽装難民申請を助長している」などと主張し、教会を批判した。
これに対し、自身もイランから難民として英国に渡ってきた背景を持つデカニ主教は、英デイリー・テレグラフ紙に掲載した寄稿(英語)で反論した。
デカニ主教は、聖職者は「慎重な評価の後」にのみ改宗申請を承認するとし、「これを難民申請へのある種の魔法の切符のように考えるのは間違っている」と強調。その上で、「教会が(偽の改宗を認めることで)難民申請者を支援し、難民認定が早期に実現しているのではないかという考えは、全く不正確です」と述べた。
また、洗礼の指針は聖職者に対し、洗礼志願者がその重要性を十分に理解しているかどうかを見極めるよう求めていることを指摘。難民申請者の申請を評価し、審査する責任は内務省にあると述べた。
「私はキリスト教指導者として、しばしば深く傷ついたトラウマを抱えた人々への支援に関与することを謝りはしません」
「教会には、難民申請を審査し承認する政府の義務を回避させる権限はありません。それは内務省にあるのです」
英国の貴族院(上院)議員でもあるデカニ主教は、小型ボートなどで英仏海峡を渡って英国に来る不法入国者を、アフリカのルワンダに移送する「ルワンダ計画」に自身が反対していることと、難民申請制度の乱用との関連性を示唆する意見にも反論した。
「私たちは政治家ではありませんし、政治的議論に参加することにより傷つくことも知っています。難民申請制度の乱用と国会における主教の行動に関連性があると主張する人々は、全く誤っています」
「以前、こうした上級聖職者への懸念を提起する機会があったにもかかわらずそうはしなかった前内相によって、こうしたことがほのめかされるのを見るのは悲しいことです」