トルコ最大の都市イスタンブールのカトリック教会で1月28日、ミサ中に銃を持った覆面の2人組が乱入する事件があり、1人が死亡、数人が負傷した。事件後、過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を発表した。
AP通信(英語)によると、ISはメディア部門のアマク通信を通じて、イスタンブールのサリエル地区ビュユクデレにある聖マリア・ドラペリス教会で、「キリスト教の不信心者たちの集会」を攻撃したなどと発表した。
ロイター通信が入手した監視カメラの映像には、日曜日のミサ中に銃を持った覆面の2人組が乱入し、発砲する様子が映っている。
トルコのアリ・イェルリカヤ内相によると、警察は29日未明、ISのメンバーだとされるロシア人とタジキスタン人の男2人を逮捕した。AP通信によると、警察は30カ所以上を捜索し、この他51人の身柄を拘束。51人のうち23人は収容所に送られ、強制送還を待つ状況だという。
イェルリカヤ内相は次のように述べた。
「容疑者は2人とも外国籍で、1人はタジキスタン出身でもう1人はロシア人です。私たちは、彼らがISの一員であると判断しています」
イェルリカヤ内相は28日、X(旧ツイッター、トルコ語)への投稿で、「この卑劣な攻撃を強く非難する」と述べていた。
教会の弁護士であるアブシン・ハティポグル氏はAP通信に対し、この攻撃で射殺されたトゥンサー・チハンさん(52)は「何も悪いことをしていない」人だったと話した。
さらにハティポグル氏は、チハンさんはキリスト教徒ですらなく、イスラム教シーア派の一派であるアレビ派の信者であったと付け加えた。米ニューヨーク・ポスト紙(英語)によると、チハンさんのおいが身元を確認し、チハンさんが知的障がい者だったことを明かした。イェルリカヤ内相も、チハンさんの身元を確認したとしている。
ハティポグル氏によると、教会はこの攻撃を受け、周辺の警備強化を求めている。
米CNN(英語)によると、サリエル地区のスクル・ジェンク地区長は地元メディアに対し、攻撃があった際、チハンさんは教会の入り口近くに立っていたと語った。
「(教会の)司祭によると、チハンさんは常に教会に通っており、司祭はこの人物を知っていて『良い人』だと言っていました」
トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領の最高顧問の一人であるアキフ・カガタイ・キリッチ氏は28日、Xに次のように投稿した。
「このような挑発行為はわが国では決して許されません。犯人は可能な限り速やかに逮捕され、司法の前で責任を問われることになるでしょう」
イスタンブール使徒座代理区のマッシミリアーノ・パリヌーロ司教は、カトリックメディア「EWTN」(英語)に対し、チハンさんが殺害されたのは「聖体の秘跡の中、信者全員が祈っているところでした」と話した。
また、「もしこれが宗教的不寛容の兆候だとしたら、私たちの共同体の未来にとっては悪い兆候かもしれません。祈りましょう」とコメント。容疑者が逮捕されたことに対しては、「私たちは神の正義を信じています」と述べた。
カトリック系のCNA通信(英語)によると、トルコ・カトリック司教協議会は28日、マルティン・クメテック大司教(イズミル大司教区)が署名した声明を発表。事件を非難し、人々に祈るよう求めるとともに、「憎しみと宗教差別の文化を広めない」よう促した。
「私たちは、人道に対するこの暴力行為を断固非難します。トルコの国家治安部隊が責任者を見つけ、正義が行われることを信じます。私たちは、真実が明らかにされ、私たちの共同体や教会により強い安全が保証されることを強く求めます」
ローマ教皇フランシスコもX(英語)で事件に言及し、次のように述べた。
「ミサ中に武力攻撃を受け、1人が死亡、数人が負傷したイスタンブールの聖マリア・ドラペリス教会の共同体に、心から寄り添います」
米国務省によると、2022年現在、トルコには約2万5千人のカトリック信者が住んでいる。
ロイター通信(英語)によると、イェルリカヤ内相は、同国では昨年6月以来、ISとの関係が疑われる2086人の身柄を拘束し、529人を逮捕したと述べている。また、トルコ国営のアナドル通信によると、同国では1月3日、ISとの関係が疑われる25人が、教会やシナゴーグへの攻撃を計画していた容疑で逮捕されている。