トルコ南東部で、約2千年前の巨大な地下都市が発見された。この種のものとしては最大規模とみられ、研究者らはローマの迫害から逃れた初期のキリスト教徒たちの避難所であった可能性があるとしている。
科学ニュースサイト「ライブ・サイエンス」(英語)によると、トルコ南東部のマルディン県ミディヤットに位置し、「マティアテ(Matiate)」と名付けられたこの地下都市は、2020年に現地の歴史的な通りや家屋の清掃・保存プロジェクトを行う中で発見された。
発掘調査の責任者であるマルディン博物館のガニ・タルカン館長によると、これまでに発掘が進んだ範囲は全体の5パーセント以下にすぎない1万平方メートル程度。地下都市は全体で40万平方メートル以上あるとみられ、これは最大で7万人を収容できる規模だという。
これまでに、49の仕切られた空間が発見されており、通路や住居スペース、井戸、穀物貯蔵庫、礼拝所とみられる場所も見つかっている。礼拝所とみられる場所には、キリスト教の教会やユダヤ教のシナゴーグとみられるものがあり、壁一面にダビデの紋章(星のマーク)が描かれた大きなホールもあるという。
タルカン氏はトルコの英字紙「デイリー・サバフ」(英語)に対し、次のように語っている。
「マティアテは1900年もの間、途切れることなく使われ続けてきました。最初は隠れ家や避難所として建てられました。ご存じのように、2世紀当時、キリスト教は公認された宗教ではありませんでした。キリスト教を受け入れた家族や集団は、一般的にローマの迫害から逃れるために地下都市に避難したり、地下都市を形成したりしました。ミディヤットの地下都市は、こうした目的のために造られた生活空間の一つだった可能性があります。少なくとも6~7万人が、この区域の地下で生活していたと推定されます」
Midyat Underground City pic.twitter.com/8ZIIx0kGb5
— Gani Tarkan (@ganitarkan) 2021年8月11日
ローマ時代の硬貨や福音書に描かれているものと類似したオイルランプなど、歴史的遺物や装飾品も出土しており、マティアテは2世紀から3世紀ごろには建設されていた可能性がある、とタルカン氏は述べている。
ミディヤットは、シリア正教会のトルコにおける拠点で、シリア語で「トゥル・アブディン」(神のしもべたちの山)と呼ばれる地域に位置し、幾つもの修道院がある。しかし、トルコ当局は2017年、シリヤ正教会が所有する修道院や墓地、教会など、50の建造物を接収。中には、1500年前に建てられた修道院2つも含まれる。
■ 地下都市「マティアテ」のスライド写真(米ウォール・ストリート・ジャーナル紙、英語)