聖書学者らが、古代イスラエルのどの碑文よりも何世紀も前に作られ、「呪いの板」として知られる鉛板に刻まれた古ヘブライ文字の碑文を解読したと発表した。この鉛板は約2センチ四方の大きさで、お守りとして使われていたと考えられており、旧約聖書の申命記11章と27章、またヨシュア記8章に記されている呪いの山「エバル山」で発見された。
米福音派団体「聖書研究協会」(ABR)は3月24日、テキサス州ヒューストンのラニア神学図書館で記者会見(英語)を開き、この小さく折りたたまれた鉛板に刻まれた古ヘブライ文字のアルファベット40文字を解読したと発表した。そこには、「呪われた、呪われた、呪われた――YHWH(ヤーウェ)の神によって呪われた、呪われて死ぬ、呪われて必ず死ぬ、YHWHによって呪われた、呪われた、呪われた」と書かれていたという。
ABRの発掘責任者であるスコット・ストリップリング氏は、エルサレム・ポスト紙(英語)に対し、「このお守りは、後期青銅器時代第2期、つまり紀元前1400年ごろのものだと思います」とコメント。「これは多くの懐疑論者が信じる聖書の存在時期よりも早く、イスラエルにおけるYHWHという言葉の最古の出現であり、(神とイスラエルの民の)契約に関する場所で発見されました。その意味は非常に大きく、今後何年にもわたって反響を呼ぶでしょう」と語った。
「デフィクシオ」とも呼ばれるこの鉛板は、聖書神学校(同州ケイティー)の考古学研究所所長も務めるストリップリング氏と彼のチームが、1982年から89年にかけてヨルダン川西岸で行われた発掘調査の廃棄物をふるいにかけていたところ、2019年12月に発見した。エバル山は、ヨルダン川西岸の都市ナブルスに近く、この発掘調査はハイファ大学(イスラエル)の故アダム・ゼータル教授(考古学)が指揮したもので、「ヨシュアの祭壇」と呼ばれる石造りの古代建造物が発見されるなどした。
一方、ストリップリング氏は、「それでも、このお守りと碑文は、聖書に先行するものではありません」と言う。「私たちは、これが聖書の出来事と平行して存在したものだと信じています。私たちは、聖書に書かれていることと物質文化で見いだされたことの間の一貫性、つまり迫真性について話しているのです。もし聖書が真実であれば、このようなものが見つかると予想されますし、実際、私たちによって発見されたのです」
同じく解読に関わったハイファ大学のガーション・ガリル教授(ユダヤ史学、聖書学)は、タイムズ・オブ・イスラエル紙(英語)に対し、「これは、千年に一度の大発見です」と語っている。
しかし、この主張に対し懸念を示す者もいる。ある匿名の学者は同紙に、「科学誌で発表する前にニュースで発表するというやり方には、少々違和感がある」と語っている。
ABRは、査読付きの学術論文が今年後半に発表される予定だとしている。
旧約聖書によると、エバル山は、イスラエルの民が約束の地カナンに入る前に神と契約を交わした際、神の律法を破った者に対して呪いをかける山であったとされる。申命記11章29節には、次のように書かれている。
あなたが入って得ようとしている土地に、あなたの神、主が導き入れられるとき、ゲリジム山に祝福を、エバル山に呪いを置きなさい。