米最大のプロテスタント教団である南部バプテスト連盟(SBC)は14日、ルイジアナ州で開催した年次総会で、女性が「いかなる種類の牧師」としても奉仕することを禁止する教憲修正案を圧倒的多数で承認した。SBCの教憲を修正するためには、修正案が連続した2回の総会で承認される必要があり、来年の総会でも承認されれば、正式に決定することになる。
修正案は、アーリントン・バプテスト教会(バージニア州)のマイク・ロー牧師が提出した。総会に出席した1万2千人を超える代議員らの投票により、約8割の賛成を得て、14日午後に承認された。修正案は、教会内の女性が牧師の肩書を持たないことをSBCの加盟条件に加えるもの。
ロー牧師は総会で、「私は、SBCの教憲を修正し、第3条第1項に第6号を加えることを提案します。第6号は次の通りです。『第6号 女性をいかなる種類の牧師としても、支持せず、任命せず、雇用しない』」と提案。「私たちは、テモテへの手紙一の2章12節(婦人が教えたり、男の上に立ったりするのを、わたしは許しません。むしろ、静かにしているべきです)を恥じたり、聖書の教えを恐れたりしません。私たちは、私たちの神とその言葉を恥じることはありません」と述べた。
SBCは、公式の信仰表明である「バプテスト・フェイス&メッセージ2000」(英語)で、男性と女性は共に福音宣教に召されているとする一方、牧師や長老などは男性に限定されるとしている。
「バプテスト・フェイス&メッセージ2000」の起草を担った検討委員会の委員で、そのスタディーガイドを執筆したチャールズ・ケリー、アルバート・モーラー、リチャード・ランドの各氏は昨年、女性牧師の扱いを巡って牧師の定義に注目が集まったことを受けて発表した声明(英語)で、牧師という言葉は「牧師の職を果たし、牧師の機能を遂行する者」を意味すると述べている。
SBCの執行委員会は、女性牧師を禁止する修正案を総会に提出し、投票を行うという勧告については支持したが、その一方で、修正案そのものに対しては明確に否定的な姿勢を示していた。
執行委員会は、「バプテスト・フェイス&メッセージ2000」の第6条にある「男性と女性は共に教会での奉仕のために賜物を与えられているが、牧師・長老・監督の職は、聖書によって資格を与えられた男性に限定される」という文言を肯定しつつも、「われわれの信念は、われわれの教憲よりもむしろ、採択した信仰表明(バプテスト・フェイス&メッセージ2000)に最も適切に述べられていると考えており、教憲修正案には反対する」と述べていた。
修正案の承認は、女性を牧師として任命したことを巡り、サドルバック教会(カリフォルニア州)を除名することを決議した数時間後に行われた(関連記事:米南部バプテスト連盟、総会でサドルバック教会の除名を決議 女性の牧師任命巡り)。
サドルバック教会は2021年5月、初めて女性3人を牧師に任命。その後、創設者のリック・ウォレン牧師が引退した後、後継者として他教会を牧会していたアンディー・ウッド牧師と妻のステイシー・ウッド牧師を迎えたが、SBCはステイシー牧師が他の牧師よりも指導的な立場にある教導牧師(teaching pastor)に就任したことを問題視したとされている。
ウォレン牧師は総会で、SBCは女性牧師について意見の相違に同意すべきだと主張し、SBCの教義について、牧師などを男性に限定していること以外は全て同意していると強調。「私たち(SBC)が教会を除名する理由は、性的な罪、人種的な罪、経済的な罪、霊的権威(の誤用)の罪、SBCの信条を害する罪などであるべきです。しかし、女性を牧会スタッフに含めている1129の教会は罪を犯していません」と述べていた。