米最大のプロテスタント教団である南部バプテスト連盟(SBC)は年次総会(6月14~15日、カリフォルニア州アナハイム)で、繁栄の福音を「偽りの教え」だとして非難する決議案を採決した。特にイエス・キリストの十字架の贖罪(しょくざい)の御業に関して、聖書を歪曲するものだとした。
採決された決議案(英語)は、繁栄の福音を「イエスの犠牲と贖罪の死により、信じる者には健康や富が付与され、苦しみや病気、貧困が取り除かれる」とする信条だと定義。繁栄の福音は、「聖書的寛容さを歪め、弱い立場の人々を食い物にし、もっぱら信仰の欠如だとして病気の人々を責め、苦しみに関する聖書的理解を損なう」ものだと非難している。
その上で、クリスチャンは「偽りの教えを警戒し、羊の皮を身にまとってあなたがたのところに来るが、その内側は貪欲な狼(おおかみ)である偽預言者たちに気を付け、聖書の真実性を守るべきです」と強調している。
ストーリーライン教会(コロラド州アーバダ)のJ・T・イングリッシュ牧師は、決議案に関する討議の中で、SBCはこれまで繁栄の福音の問題について公式に見解を示したことがなかったと指摘した。
繁栄の福音の定義における「苦しみや病気、貧困が取り除かれる」は当初、「病気や貧困が取り除かれる」とされていた。しかし、討議の中でルイジアナ州の牧師が「苦しみ」の文言を追加する修正動議を出し、全会一致で承認された。
また討議では、繁栄の福音は「(神は)人が地上で幸せかつ健康で裕福になることを望んでいる」とする考えとも関連しているとして、繁栄の福音を非難する各項目に「およびニューエイジの教えと実践」の文言を追加するよう求める修正動議も出された。繁栄の福音の批判者たちは、繫栄の福音は幸福や健康、裕福さを実現させようとする異教のイデオロギーを採用していると主張している。この修正動議を提出した代議員は、「それらはアフリカの異教の慣習、ブードゥー教から来ています」と述べ、ニューエイジの教えは繁栄の福音の「燃料」になっていると説明した。
しかし、イングリッシュ氏は、ニューエイジの考え方はSBCとして取り上げるべき重要なものだが、この決議案では繁栄の福音だけを明確に語ることが重要だと指摘。結局、ニューエイジに関する文言を加える修正動議は否決された。
繁栄の福音を非難する決議案は、代議員らの圧倒的な支持を得て採決された。
決議案は結論部分で、「神だけが私たちの最高の善であり、最高の宝であって、健康や富、病気の除去ではない」とし、「私たちはキリストの御業によって贖(あがな)われた永遠の相続を確信しており、その確信は聖霊の内在の御業によって保証されている」と明言している。
年次総会ではこの他、米国の過疎地における宣教活動の重要性を確認する決議案(英語)や、ウクライナでの戦争の終結を求める決議案(英語)などが採決された。