米国の宇宙飛行士で、敬虔なクリスチャンとして知られるビクター・グローバーさん(46)が、来年11月に予定されている米航空宇宙局(NASA)の月周回飛行を行う操縦士として、乗組員4人のうちの1人に指名された。有人の月周回飛行は約半世紀ぶりとなる。
NASAは4日、月探索計画「アルテミス計画」の第2弾で月周回飛行を行う乗組員4人を発表した。発表(英語)によると、指名された宇宙飛行士は、クリスティーナ・コックさん、リード・ワイズマンさん、ビクター・グローバーさんの米国人3人と、カナダ人のジェレミー・ハンセンさん。10日間にわたり、NASAの宇宙船「オリオン」の飛行試験を行う。
同機の操縦士を務めるグローバーさんは、イラクで戦闘機のパイロットを務めた経歴を持ち、NASAに加わる前の2013年には、米海軍航空士官だった故ジョン・マケイン上院議員(共和党、アリゾナ州選出)の立法担当補佐官を務めていた。
ヒューストンで行われた乗組員の発表イベント(英語)で、グローバーさんは「この素晴らしい機会を神に感謝したい」とコメント。この計画は「4人の氏名が発表されたことよりも遥かに重要」だと述べ、自身の思いを語った。
「私たちは人類の歴史におけるこの瞬間を祝う必要があります」とし、この計画には「人類の火星旅行につながる次の一歩」としての意味があると指摘。「神がこの計画を祝福してくださることを祈りますが、国家間だけでなく自国においても、協力と平和に向けた動議づけとして役立つものとなるよう祈ります」と続けた。
グローバーさんは、ヒューストン近郊にあるチャーチ・オブ・クライストの教会に通っており、2020年には米キリスト教紙「クリスチャン・クロニクル」の動画インタビュー(英語)に応えている。グローバーさんは当時、国際宇宙ステーション(ISS)に向かうため、6カ月間の訓練を行っていた(関連記事:米クリスチャン宇宙飛行士、聖書を持って宇宙に ネット礼拝にも参加予定)。
グローバーさんは動画インタビューで、「神から与えられた能力を使って自分の仕事をしっかりこなし、他の乗組員たちやミッション、NASAをサポートしたいと思います」と言い、「それこそが、私が一番重要だと思っていることなのです」と語っていた。
また、聖書と聖餐の杯を携えて宇宙船に搭乗し、「インターネットで礼拝に参加したり、献金したり、聖書の読書会や祈り」に勤しむ予定だとも述べていた。
今回搭乗する4人のうち、グローバーさんはアフリカ系米国人として、コッホさんは女性として、ハンセンさんはカナダ人として、それぞれ初めて月周回飛行に参加することになる。
カナダ宇宙庁を管轄するフランソワ・フィリップ・シャンパーニュ革新科学産業相は声明で、「カナダがこのエキサイティングな旅の中心にいる」ことを歓迎すると述べた。
シャンパーニュ氏は、「カナダ国民を代表して、ジェレミー(宇宙飛行士)がこれまでに行われた最も野心的な人類の試みの一つの最前線にいることを祝福したい」とコメント。「カナダがアルテミス計画に参加することは、宇宙におけるわが国の歴史の決定的な一章となるだけでなく、両国の友好と緊密なパートナーシップを証明するものでもある」と続けた。
NASAの有人宇宙船で初めて月面に降り立ったのは、1969年7月のアポロ11号。そして、72年12月のアポロ17号による飛行が最後の有人月着陸ミッションとなった。
来年11月に飛び立つ予定の乗組員4人は、オリオンの飛行試験として一連のデモンストレーションを実施するため、飛行中に共同作業を行う。
NASAのジョンソン宇宙センターで飛行計画ディレクターを務めるノーム・ナイト氏は、「この勇敢な4人が月とその先への旅をスタートさせてくれることを、この上もなく喜んでいます」と述べた。
「彼らはまさに宇宙飛行士団のあるべき姿です。つまり、高い能力と実績を持ち、チームとしてあらゆる試練に挑むスキルと決意を持つ者たちの集まりです。アルテミス計画第2弾のミッションは困難なものとなるでしょう。未来の宇宙飛行士を月に送り出す準備として、私たちの限界を試すものとなるでしょう。リード、ビクター、クリスティーナ、ジェレミーが操縦に当たりますが、行く手に立ちはだかるあらゆる困難に立ち向かう準備ができていると、私は確信しています」