インドのナレンドラ・モディ首相は、イースター(復活祭)の9日夕に首都デリーにあるカトリック教会の聖心大聖堂を訪問した。
自身のツイッターに投稿した動画には、カトリック教会の聖職者や信者らに迎えられ、聖歌を聞き、祈りを共にするとともに、十字架の贈り物を受け取ったり、大聖堂の敷地内に植樹したりする様子などが映っている。
訪問の様子を写した写真も複数枚投稿し、「今日、イースターという非常に特別な日に、デリーの聖心大聖堂を訪問する機会を与えられました。キリスト教界の霊的指導者たちとも会いました」とつづった。
モディ氏はこの日の朝にも、ツイッターに「ハッピー・イースター!」と投稿。「この特別な日に、私たちの社会が調和の精神を深めることができますように。この日が、人々に社会に対する奉仕を促し、社会的弱者を助け、彼らに力を与えることを促す日となりますように。私たちはこの日、主キリストの敬虔な思いを思い起こします」とつづっていた。
インドの英字日刊紙「インディアン・エクスプレス」(英語)によると、モディ氏がインド国内のキリスト教の大聖堂を訪れるのは、首相就任後これが初めて。訪問は約30分だったという。
一方、同紙は今回の訪問について、モディ氏率いる与党・インド人民党(BJP)のキリスト教界に対する働きかけの一環とする見方を伝えている。今回の訪問は、教会側からではなく、モディ氏側からの働きかけによるものだったという。
インドでは来年、総選挙(連邦下院選挙)が予定されている。今年2月には北東部の3州で議会選挙が行われ、BJPが予想を上回る勝利を収めた。3州の内、メガラヤ州とナガランド州は、インド国内でもキリスト教徒が多い州だとされる。
Easter celebrations in Delhi! pic.twitter.com/J0gz9RhhLj
— Narendra Modi (@narendramodi) 2023年4月9日
BJPはヒンズー至上主義を掲げる政党で、2014年にモディ氏が首相に就任してから、インド国内ではキリスト教会に対する圧力が劇的に高まっているとされている。キリスト教迫害監視団体「オープンドアーズ」(英語)は今年、インドを世界で11番目にキリスト教徒に対する迫害がひどい国とした。
米国際宗教自由委員会も昨年、インドを信教の自由に関して「特に懸念のある国」に指定するよう、米政府に勧告している。
Today, on the very special occasion of Easter, I had the opportunity to visit the Sacred Heart Cathedral in Delhi. I also met spiritual leaders from the Christian community. Here are some glimpses. pic.twitter.com/7ig2Q4yHAT — Narendra Modi (@narendramodi) 2023年4月9日
一方、カトリック系のUCAN通信(英語)によると、聖心大聖堂でモディ氏を迎えたデリー大司教区のアニル・コート大司教は、「首相が私たちの大聖堂を訪れ、イースターのあいさつを交わされたことを大変うれしく思っています」と語った。
モディ氏の訪問時には、東方典礼カトリック教会のクリアコセ・バラニクランガラ司教(シロ・マラバル典礼)と、トマス・アントニオス・バリヤビライル司教(シロ・マランカル典礼)も同席した。
バラニクランガラ司教は、今回の訪問を「キリスト教徒に対する迫害の脅威に取り組むために、連邦・州レベルで対話を開始する絶好の機会として扱うべきです」と指摘。「(今回の訪問は)私たちの国の多くの場所で、キリスト教徒とその施設が攻撃されているという事実を否定するものではないのです。私たちは態度を改め、あらゆるレベルでの対話にもっと参加する必要があります」と語った。