香港で10月27日、プロテスタントの牧師が、扇動的行為の罪で10月、扇動的発言の罪で3月、合わせて1年以上となる禁錮刑を言い渡された。2年前に香港国家安全維持法(国安法)が施行されて以来、キリスト教の教職者が有罪判決を受けるのはこれが初めて。
カトリック系のUCAN通信(英語)によると、計1年1月の禁錮刑を言い渡されたのは、ゲイリー彭満円(ポン・マンイェン)牧師(59)。西九龍裁判所が1月4日、民主化運動家の鄒幸彤(チョー・ハントゥン)氏に判決を下した公判において、傍聴していた彭牧師が判事に対し、「あなたは良心を失っている」と発言したことが問題とされた。
鄒氏はこの公判で、無許可の天安門事件の追悼集会に人々の参加を促したとして、禁錮1年3月を言い渡された。この公判では、鄒氏が自身を弁護する主張をした後、拍手をしたことが判事に対する批判に当たるとして、68歳の主婦も扇動罪に問われて有罪となり、禁錮3カ月の実刑判決が下された。
彭牧師とこの主婦は、傍聴していた鄒氏の公判におけるこれらの言動を理由に、4月6日に逮捕されていた。彭牧師はまた、ユーチューブに投稿した動画やライブ配信での発言についても罪に問われた。ある動画で彭牧師は、判事が裁判中に拍手した出席者に退席を求めた際、「(出席者を)黙らせるために脅した」と述べ、判事の対応を批判していた。
判決で彭牧師は、「判事をおとしめた」のであり、「口が滑った」わけではないとされた。
彭牧師は、9月15日に行われた公判では、「今、法廷で起こっていることは、単に扇動罪を巡る法的争いなのではなく、人権と自由を守る戦い、良心を守る戦いなのです」と主張。法制度の変革を訴える人々が扇動罪で有罪となるのであれば、香港の法の支配は崩壊してしまうと訴えていた。
米国に拠点を置く迫害監視団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC、英語)が、香港のカトリック聖職者の話として伝えたところによると、香港の人々は、国安法の下で告発されることを恐れ、もはや政府を攻撃するようなことをフェイスブック上で「シェア」したり、「いいね」したりしなくなったという。
ICCは、「国安法の施行以前であれば、彭牧師の事件はネット上で広く議論されていたかもしれないが、今は彼についてほとんど議論されていない」と伝えている。