8万人を超える会員を有する香港バプテスト連盟(HKBC)会長の羅慶才(ロー・ヒンチョイ)牧師(70)が4月20日、香港の自由に対する弾圧が激化していることから、妻と共に英国に移住した。任期満了まで残すところ10日だったが、「一身上の都合」により辞任し、移住を決めた。
羅夫妻は祈った上で香港を去る決意をしたという。中国政府が香港国家安全維持法(国安法)を施行した後、民主派の人々が相次いで当局に追われ、勾留されるのを目の当たりにしてきたためだ。国安法は、香港で数十万人がデモに参加する民主化運動が起きたことを受け、反対意見を押し潰す狙いで施行された。昨夏の施行以来、民主化運動家らが相次いで拘束され、勾留されている。
公の立場で国安法に反対してきた羅氏は、香港のキリスト教メディア「時代論壇(クリスチャン・タイムズ)」に掲載した公開書簡(中国語)で、「なぜこの時期に移民を選ぶのか。その背後にある最大かつ唯一の理由は、香港の変化であり自由の縮小です」と語っている。「政府の政策は、合理性と公平性という基本原理から逸脱しています。現実は、香港が『引き裂かれた』だけでなく、深刻な『転位』です」
今年1月の民主化運動家に対する取り締まりで50人が拘束されたことを受け、香港の旧宗主国である英国では、上下院議員ら100人余りが4月初め、ボリス・ジョンソン首相に対し香港に制裁を課すよう要請した。
香港の民主化運動指導者、黄之鋒(こう・しほう、英名:ジョシュア・ウォン)氏(24)は昨年12月、抗議運動への関与を理由に禁錮13月半の実刑を命じられ、現在服役している。クリスチャンである黄氏は収監直後、ドイツ紙の取材に対し、新約聖書のローマ人への手紙5章3~4節を心の支えにしていると明かしていた。この箇所には次のように記されている。
そればかりでなく、苦難をも誇りとします。わたしたちは知っているのです、苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを。(ローマ5:3~4)
民主化運動家で元議員の羅冠聡(ら・かんそう、英名:ネイサン・ロー)氏(27)も4月初め、英国への亡命を認められた。
「英国海外市民(BNO)パスポート(旅券)」を持つ香港市民とその家族らに対し、英政府が特別ビザ(査証)を発給し、英国の市民権獲得への道を開いたことで、英国のキリスト教会は移民を希望する香港市民の受け入れ準備を進めている。
英国での生活をサポートするための教会主導の特設サイト「UKHK」(英語)は、同国への定住方法に関する情報を提供しており、その中には香港市民を温かく迎えることを約束した教会のリストも含まれる(関連記事:「英国へようこそ!」 香港からの移住者向けに教会主導の特設サイト開設)。英政府は今年1月末から特別ビザの申請受付を開始。資格を満たす香港市民は290万人に上るとされ、英政府は5年間で26万~32万人の香港市民が申請すると試算している。