米国最大のルーテル派教団である米国福音ルーテル教会(ELCA)で、トランスジェンダーとしては初めて監督になったメーガン・ローラー氏(42)が6日、フェイスブックに声明(英語)を投稿し、自身が監督を務めていたシエラ・パシフィック・シノッド(教区)を4日に辞任したと明らかにした。
辞任の発表前には、家族と話し合い、シノッドの評議会とも話し合いを持ったという。「合意の最終的な内容はまだ詳細を交渉中ですが、今日のお知らせを考慮する中で、この情報は公開すべきだと私は考えています」とローラー氏は声明で述べている。
ローラー氏の発表は、ELCAのリザベス・イートン総裁監督が、ローラー氏に対する懲戒手続きの開始を発表したのとほぼ同時に行われた。
イートン氏は当初、ローラー氏に対する懲戒処分に反対していたが、ローラー氏が不在だった5日夜の監督会議において懲戒手続きを開始する旨を発表。シエラ・パシフィック・シノッドは声明(英語)で、「総裁監督は明るみに出た追加情報に基づき、ローラー監督の停職を含めた懲戒手続きを直ちに開始することを発表しました」「監督会議はこの決断を強く支持しました。この手続きは時間を要しますので、適宜、最新情報をお知らせします。教会のために引き続きお祈りください」と伝えていた。
ローラー氏は懲戒手続きの開始を問題視しており、フェイスブックに投稿した声明では「私が辞任した後も、私に対する嫌疑の詳細が具体的にされておらず、教団の手続き(の在り方)と矛盾しているように思えます」と主張している。
サンフランシスコ警察のコミュニティー・チャプレン・コーディネーターや、サンフランシスコのグレース福音ルーテル教会の牧師を務めていたローラー氏は昨年9月、トランスジェンダーとしては初めてELCAの監督に就任した(関連記事:米国福音ルーテル教会でトランスジェンダーの監督誕生へ)。
しかし、監督就任後間もなくして、倫理的に問題のある行動を取っていた疑いが表面化。シエラ・パシフィック・シノッドに所属していたラテン系の教会「ミシオン・ラティナ・ルテラナ」(現在はELCAから独立)のネルソン・ラベル・ゴンザレス牧師を人種差別的に解雇したとされる事案や、グレース福音ルーテル教会の牧師時代に取った行動をめぐる訴訟などが取り上げられるようになった。
このため、シノッド内でローラー氏の辞任を求める声が高まり、イートン氏は調査チームをグレース福音ルーテル教会に派遣し、信徒らの懸念を聞き取ることに同意。5月末には、懲戒処分は行わないものの、ローラー氏に監督の辞任を求める声明(英語)を発表した。
イートン氏は声明で、ローラー氏について「シエラ・パシフィック・シノッド内外の多くの構成員の信頼と信用を失った」と考えているとし、次のように述べていた。
「私たちは、(教会への)参与を制限したり、人々や地域社会、またキリストの体全体に害を及ぼしたりするあらゆる形態の不正義に対処しようと努めています。その取り組みが終わることは決してありませんが、私たちは共に、事態の改善に向けて努力し続けなければなりません」
しかし、ELCAのラテン宣教団体協議会(LMA)をはじめとする一部の人々は、イートン氏の決定、特に初めは懲戒処分を拒否したことを問題視した。
LMAは声明(英語)で、「この軟弱で思いやりに欠けた声明の中で、エリザベス・イートン総裁監督は人種差別的行為を『賢明でない決断』『不幸な出来事』などと表現してお茶を濁し、自身が立てられている団体の有色人種コミュニティー全体の苦しみを完全に無視しているのです」と指摘。「この教会の有色人種コミュニティーは、総裁監督が組織的人種差別に直面する有色人種を支援し、保護する能力に欠けていることを懸念すべきです」などと述べていた。