ロシア福音同盟(REA)のビタリー・ブラセンコ総主事は、自国ロシアの隣国ウクライナに対する軍事侵攻を受け、世界のクリスチャンに向けた書簡(12日付、英語)を発表した。書簡では「軍事侵攻した自国の行いを嘆きます」と述べ、侵攻を決めた自国指導者の決断は「深い悲しみと苦渋、そして後悔の念を抱かせます」と言明。REAの総主事として、さまざまな努力を行っていることを伝えた上で、「この軍事衝突によって被害を受け、愛する人や親族を失い、住む場所を失ったすべての人々に謝罪します」と述べた。
本紙による書簡の日本語訳は以下の通り。
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ロシア福音同盟
2022年3月12日
世界中の親愛なる兄弟姉妹の皆様へ
ロシア福音同盟の総主事として、別の主権国家であるウクライナに軍事侵攻した自国の行いを嘆きます。
私にとっても、他の多くのクリスチャンにとっても、軍事侵攻は衝撃的な出来事でした。最悪のシナリオにおいても、今、ウクライナで見られることが起こるとは想像もつきませんでした。互いに密接な関係を持ち、キリスト教(主に正教)信仰にあつい2つの民族が、ウクライナの非武装化を目指す側と、自国を占領から救おうとする側で、激しい戦いを繰り広げています。
ロシア人とウクライナ人の多くは、互いの国に親しい親族関係を持っています。ロシア人にはキエフに住む娘や孫が、ウクライナ人にはモスクワに住み、働いている子どもがいるかもしれません。第2次世界大戦後、戦争がどこまで広がり、どのような結果をもたらすか誰にも分からない今日、多くの人々の心には、愛する人を思い、自分の人生や国の将来を思う痛みと恐怖、そして深い悲しみが、稲妻のように心に突き刺さっています。
今日も、両国の兵士が亡くなっています。爆撃や砲撃の中で平和な感覚は破壊され、欧州中にあふれる女性や高齢者、子どもの難民に対し、強い関心が注がれています。
これらの出来事はすべて、私の国の指導者が下した決断に対して、深い悲しみと苦渋、そして後悔の念を抱かせ、その結果苦しんでいる人々に対して大きな憐憫(れんびん)の情を抱かせます。
私は、戦争を防ぐためにできることはすべて行い、この軍事侵攻を阻止しようとしました。
ロシア福音同盟の総主事として、私は侵攻の前日に、ウラジーミル・プーチン大統領に公開書簡を書き、すべての紛争の平和的解決を求めるウクライナの宗教指導者たちへの支持を表明しました。
私たちは、ロシアとウクライナの平和と調和のために断食と祈りを始めました。
私たちは、ロシア、ウクライナ、欧州の指導者らと共に、すべての当事者の和解を求める公的な祈りに参加しました。
私たちは、ロシア南部にいるウクライナ難民500人以上に人道的支援を行いました。
私たちは、軍事的・政治的対立をテーマとした円卓会議とそれに続く国際会議を開始しました。
今日、私は一市民として、またロシア福音同盟の総主事として、この軍事衝突によって被害を受け、愛する人や親族を失い、住む場所を失ったすべての人々に謝罪します。私の祈りは、皆が主から力を得て、連帯と赦(ゆる)しの手を伸ばし、私たちの世界に対して神の民として生きることができるようになることです。
天の父が私たち皆を助けてくださいますように
深い尊敬を込めて、主にあるあなたの兄弟
ビタリー・ブラセンコ