米国際宗教自由委員会(USCIRF)は5日、インド、ロシア、シリア、ベトナムの4カ国を、信教の自由を侵害する「特に懸念のある国」(CPC)に指定するよう米国務省に勧告した。国務省は今月中にUSCIRFによる最新の年次報告書に基づき、CPCと、一段階低い「特別監視リスト」(SWL)にどの国を指定するかを決定する見込み。
USCIRFは、米連邦政府に対し信教の自由に関する助言を行う独立した専門家組織。昨年はインドなど4カ国とナイジェリアを合わせた計5カ国について、CPCに指定するよう勧告していた。国務省は、ナイジェリアは指定したものの、4カ国については指定を見送っていたため、5日に発表した声明(英語)ではあらためて4カ国の指定を勧告した。
国務省からCPCに指定された国は、壊滅的な制裁措置を受ける可能性を含め、マイナスの評価を受けることになる。
USCIRFは、4カ国のCPC指定勧告のほか、アフガニスタン、アルジェリア、アゼルバイジャン、エジプト、インドネシア、イラク、カザフスタン、マレーシア、トルコ、ウズベキスタンを、SWLに加えるよう勧告している。
インドのキリスト教徒は近年、ヒンズー至上主義の与党バラティヤ・ジャナタ党(BJP)の台頭とともに、迫害の激化に直面している。米迫害監視団体「オープンドアーズ」の調査によると、インドはキリスト教徒に対する迫害の深刻さにおいて世界で10番目にひどい国に位置付けられている。
しかし、インド政府の協力者らはUSCIRFに圧力をかけ、国務省によるCPC指定勧告を回避させようとしている。
米首都ワシントンに拠点を置く「インド系米国人キリスト者連合」(FIACO)のジョン・プラブドス会長は4月、米迫害監視団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC)が主催した「インドのCPC指定」をテーマとした討論会で、「インド系米国人クリスチャンは、ヒンズー至上主義政府(インド政府)が、ワシントンの代理人を通じて、インドに対するUSCIRFの勧告を覆そうとするキャンペーンを行っていることに深い懸念を抱いています」と述べていた。
USCIRFは昨年、「インド全土で信教の自由を侵害する国家レベルの政策」が行われているとし、CPC指定を勧告。一方、インド政府はこれに対し、USCIRFの報告書には「偏見がある」として批判していた。
インドの人権団体は先月、2021年の最初の9カ月間だけで、キリスト教徒に対する迫害事件が300件以上確認できたと発表。今年はこうした事件の数が同国史上、最悪になるかもしれないと警鐘を鳴らしている。
一方、ロシアについて、USCIRFは次のように述べている。
「信仰を実践しようとするエホバの証人に対して、ロシアの裁判所がこれまでよりも厳しい実刑判決を下すケースが増え続けている。過激派やテロリストを掲載した同国政府の膨大なリストには、犯罪を犯していない人も数多く含まれている。刑期を終えた後もリストに登録されている人々もおり、その影響で資産の凍結や制限措置が科されたり、宗教活動に参加する権利が奪われたりしている」
また、シリアについては、次のように指摘している。
「2020年と21年には、バッシャール・アサド大統領が支配するシリア政府と、トルコが支援するイスラム至上主義グループなどのさまざまな非国家主体の双方が、信教の自由に対する侵害を行っている。政権が支配する地域では、政治的に反対した記録がない場合、宗教的少数派を取り締まることはないが、その一方でアサド大統領は宗教的権威を徐々に取り込んでいる」
ベトナムについては、「(当局が)モン族や山岳民族のキリスト教徒に対して、身体的暴行、拘束、投獄、教会の財産や資産の強制没収、その他の虐待を行っており、これらのキリスト教徒に信仰を放棄させようとする取り組みを行っている」などとしている。