インド北部のウッタルプラデーシュ州当局は、同州の「改宗禁止法」に基づき、祈祷会に参加していた牧師7人を逮捕した。同法については、ヒンズー民族主義者が迫害の道具としているとして、現地のキリスト教徒が批判している。
カトリック系のUCAN通信(英語)によると、牧師らは10日、同州マウ地区で行っていた祈祷会の最中に逮捕され、「違法」な集会を開いたとして起訴された。
米国を拠点とする迫害監視団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC)は、牧師らが依然として勾留されていると伝えている。牧師らの弁護士であるアシッシュ・クマール氏は、「保釈申請を行った。彼らがすぐに保釈されることを期待している」と話している。
警察は当初、祈祷会に参加していた一般参加者約50人も拘束したが、同日中に釈放した。また、礼拝所近くのバス停にいたカトリックの修道女2人も、夕方まで数時間にわたって警察署に勾留されたとUCAN通信は伝えている。
同州のカトリック修道組織「インド宣教者会」(IMS)のアナンド・マシュー神父は、「警察は牧師と一緒にシスターたちも逮捕したかったようですが、牧師と信者たちが彼女たちは祈祷会に参加していなかったと言ったため、シスターたちを釈放しました」と話している。
ウッタルプラデーシュ州は、キリスト教徒がヒンズー教徒を改宗させるため、「強制」したり、金銭的な利益を与えたりしているとする考えに基づいた改宗禁止法を持つインドの幾つかの州の一つ。
インドの幾つかの州ではこうした州法が何十年も前から施行されているが、キリスト教徒が「強制的に」誰かをキリスト教に改宗させたとして有罪判決を受けた例はない。しかしこれらの州法は、ヒンズー民族主義者のグループが、キリスト教徒に対して虚偽の告発を行い、強制改宗の疑いを口実に攻撃を仕掛けることを可能にしている。
改宗禁止法では、誰もが「神の不興を買う」という「脅迫」をしてはいけないとされている。そのため、キリスト教徒が天国や地獄について語ることは、誰かに改宗を「強制」していると見なされる可能性がある。また、伝道集会の後にヒンズー教徒に菓子や食事を提供すると、「誘導」と見なされる可能性がある。
ICC(英語)は昨年、インドでキリスト教への大量改宗が行われているとする陰謀論について、インドの人口データから虚偽の主張だと指摘していた。
「独立後、最初の国勢調査が行われた1951年には、インドの全人口に占めるキリスト教徒の割合はわずか2・3パーセントでした。直近の国勢調査が行われた2011年も、キリスト教徒は依然として人口の2・3パーセントしか占めていません」
キリスト教迫害監視団体「オープンドアーズ」がまとめた「ワールド・ウォッチ・リスト2021」によると、インドは世界で10番目にキリスト教に対する迫害が深刻な国とされている。米国際宗教自由委員会は、深刻な宗教的自由の侵害に関与または侵害を容認しているとして、インドを信教の自由が「特に懸念される国」として指定するよう米国務省に求めている。
オープンドアーズは、ヒンズー民族主義政党である与党バラティヤ・ジャナタ党が2014年に政権を取って以来、インドではキリスト教徒やその他の宗教的少数派に対する迫害が増加していると警告している。「ヒンズー過激派が、ほとんど何の影響もなくキリスト教徒を攻撃することが多い」とし、次のように報告している。
「ヒンズー過激派は、すべてのインド人はヒンズー教徒であるべきであり、国からキリスト教とイスラム教を排除すべきだと考えています。彼らはこの目標を達成するために大規模な暴力を行使し、特にヒンズー教を背景に持つキリスト教徒を標的にしています。キリスト教徒は『異国の信仰』に従っていると非難され、地域社会の不吉の原因とされます」