キリスト教への迫害が激化するヒンズー教大国インドで、貧しい人々に食料などを配布していた韓国人キリスト教徒1人とインド人3人が、詐欺的改宗を試みたとして、同国北部のウッタルプラデシ州で逮捕・勾留された。昨年11月に同州で「改宗禁止法」が施行されて以降、キリスト教徒が同法で逮捕・勾留されるのはこれが初めてだという。
キリスト教迫害情報サイト「モーニング・スター・ニュース」(MSN、英語)が4日に報じたところによると、イ・ミキュンさん(50、韓国ソウル在住)ら4人は昨年12月19日、同州ガウタムバドナガー県にある計画都市グレーターノイダで、「違法な宗教的改宗禁止法」(通称「改宗禁止法」)に基づき起訴された。
支援物資の配布を監督するラジ・クマール・マシさんがMSNに語ったところによると、マシさんは昨年3月23日、地区治安判事補から許可を得て数千人を対象とする支援活動を組織。支援物資はマシさんの教会周辺をはじめ、さまざまな地域で配布されたという。
「私たちの手元には、支援物資を配布したことの証拠や受け取った人たちの氏名と電話番号があります。その人たちは、私たちが彼らのうちの誰にも、信仰や宗教を変えるように求めていないことを証言することができます」とマシさんは話す。「全員が配給キットを受け取っていますが、いかなる形でも金銭を渡すと約束をされた人は一人もいません」
しかし警察側の訴えによると、イさんらは新型コロナウイルスの感染が拡大する中、ある現地人女性に接近し、地元の教会に来て無料の支援物資を受け取るよう言ってきたという。女性が警察に語ったところによると、4人は定期的に女性の元を訪ねるようになり、女性がキリスト教に改宗した場合は金銭を渡すと約束したという。
そのため現地警察は、イさんと、車を運転していたウメシュ・クマールさん、配布を手伝っていたシーマとサンディアと名乗る女性2人を逮捕した。MSNによると、クマールさんとサンディアさんはキリスト教徒ではないという。
4人は12月20日に出廷し、改宗禁止法違反と冒とく罪で有罪とされ、再勾留された。冒とく罪で有罪となったのは、特定の階級の宗教や宗教的信条を侮辱することで、その階級の宗教感情を逆なでしたためだという。
マシさんは、これを虚偽の告発に基づいた逮捕だと考えている。現地のヒンズー教国粋主義者らが綿密に計画した陰謀の一部だとし、「誰一人、逮捕された者たちの話に耳を傾けることさえしませんでした」と話す。
「ショッキングなのは、運転手のクマールさんとサンディアさんがキリスト教徒でさえないということです。現地メディアは彼ら全員がキリスト教徒だと誤った報道をしています」とマシさんは訴える。
同州でキリスト教徒が強制改宗により逮捕され、勾留されたのはこれが初めてのケースだったが、MSNによると、この翌日には同州アーザムガルでも、別のキリスト教徒の男性3人が逮捕され、勾留されたという。
米迫害監視団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC、英語)によると、ヒンズー教国粋主義者らは嫌がらせや暴行の正当化を目的とし、キリスト教徒が誰かを強制的にキリスト教に改宗させたと虚偽の告発を行い、この類の法律を乱用することが多い。こうした虚偽告発の故に、現地警察はキリスト教徒に対して行われた暴力を見落としがちだという。
ICCは、昨年11月に同州で改宗禁止法が施行された際、すでにインド国内の他の7州で施行されている同種の州法について、「宗教的な動機による暴力を誘発している」と警鐘を鳴らしていた。同州の人口は2億人近くに上るが、キリスト教徒は推定で35万人しかいない。
インド南部のタミルナードゥ州では昨年4月、30人余りのキリスト教徒が貧しい人々に食料などを配布している中、人々を強制改宗させたという虚偽の告発により逮捕された。しかし警察は、この地域で人々を改宗させようとしているのを再び目撃されないよう警告した上で、キリスト教徒らを釈放している。
キリスト教人権監視団体「リリース・インターナショナル」(RI)の最近の迫害動向調査(英語)によると、インドでは主にヒンズー教国粋主義の高まりにより、2021年もキリスト教徒や他の宗教的少数派に対する不寛容が続くと見込まれている。
インドにおけるキリスト教徒を標的とした事件は、インド人民党のナレンドラ・モディ首相が政権を握った2014年以降急増しているとRIは述べている。
統計によると、キリスト教徒が受けた宗教的動機による暴力は、2019年の最初の10カ月間では218件だったが、2020年の同時期には225件に増加している。こうした攻撃の多くは自警団によるものだった。
インドは、キリスト教迫害監視団体「オープン・ドアーズ」が迫害国家上位50カ国をまとめた「ワールド・ウォッチ・リスト」2020年版で、10位にランクされている。